2014 Fiscal Year Annual Research Report
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23248053
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Research Institution | Utsunomiya University |
Principal Investigator |
杉田 昭栄 宇都宮大学, 農学部, 教授 (50154472)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
前田 勇 宇都宮大学, 農学部, 准教授 (10252701)
蕪山 由己人 宇都宮大学, 農学部, 教授 (20285042)
佐藤 雪太 日本大学, 生物資源科学部, 准教授 (40271762)
青山 真人 宇都宮大学, 農学部, 准教授 (90282384)
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Project Period (FY) |
2011-04-01 – 2016-03-31
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Keywords | カラス / 飛翔 / 腸内微生物 / 畜舎 / 餌 / 塒 / 飛翔筋 / GPSロガー |
Outline of Annual Research Achievements |
26年度の研究実績の概要としては、飛翔の動態、保有菌の分析、継続的な寄生虫の保有動態とそれに関連した個体間の伝播の可能性などを検証した。 飛翔について:ハシブトガラスの行動については4年間の研究を経て、既に半径30km以上の広域を飛翔することが確認され、家畜農場への餌依存および飛翔範囲の季節変化があることを明らかにしてきた。特に2月から4月にかけてハシブトガラスはねぐらを変えながら他の季節よりも広域に移動し、複数の家畜農場への侵入を繰り返している様子がGPSデータロガーによる追跡により明らかになった。 保有菌について:捕獲したカラスの腸内容物を試料として、最も多い割合で検出された配列はEnterobacter属細菌由来と考えられ、全体の3分の1以上を占めていた。それに続きCitrobacter属細菌由来の配列が全体の3分の1近くを占め、次が10%弱を占めるProteus属細菌由来の配列となった。 寄生血液原虫びついて:約4年間で526羽が捕獲され、一部は複数回捕獲されており、のべ816羽が捕獲された。816羽中573羽(70.2%)で原虫DNAの増幅が認められ、Haemoproteus属(50.9%)およびLeucocytozoon属(54.2%)が多く検出された。また、原虫陽性であったGPS装着9羽の行動範囲が推定され、塒を共有していることが明らかとなった。カラスの飛翔行動を理解する為に、筋肉中のミオシンの型を決定を試みている。これまでの結果を受け、二次元電気泳動法とウェスタンブロットにより解析を行った。その結果、カラス筋肉のミオシン精製標品からpI値の異なる複数個のスポットが検出され、抗ミオシン抗体がこれらを認識した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本研究の目的は、大きく次の3点である。 1)カラスの保有病原体を明らかにし、特にマーカーとなり得る鳥マラリアなどの血液寄生原虫を中心に、水田・畑作地域、畜産・酪農地域、果樹・園芸地域など棲息環境ごとの個体群における感染状況を明らかにする。 2)カラスの移動範囲、スピード、移動軌跡の変化を、水田・畑作地域、畜産・酪農地域、果樹・園芸地域ごとに把握するため鳥搭載型高機能全地球測位システム(GPS―TX)を使い1)の結果と併せて病原体伝播経路とスピードを把握することにより感染伝播の動態基盤を構築する。3)移動のスピードと範囲は生理学的には、鳥の飛翔機能も深く関わる。したがって翼を開閉する深胸筋、浅胸筋の速筋および遅筋 型アクチンの生化学・組織化学的に解明し移動の生理学的要因を明らかにする。これらは、基本には研究機関を通じ、継続しかつデータを蓄積していく研究手法である。その点から考え見れば、平地的農村、山間部集落などカラスの動態をみるエリアの違う区域のカバーは概ねできている。また、寄生虫のタイプ分けとともに群間の罹患の様子も解析できてきた。
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Strategy for Future Research Activity |
行動範囲の把握については、塒、営巣の場所および立地条件を調査する。また、GPSによる行動軌跡のもならず、行動の起点となる塒を観察する。このことにより、本研究の主題でもあるカラス間の群間の交雑を確認できるとともに感染などの裏付けとなる接触の根拠も引き出す手法が確立できる。ただ、地域別のカラスの動態について、海岸部も想定しており、昨年度カラスの捕獲とGPSの装着を試みたがトビなどの存在が多いためカラスを必要な数捕獲できていない。本年度、再度の試みを行う予定でる。また、飛翔と関連するカラスの個体が有する飛翔筋の生理的な解析もアミノ酸組成、タンパクの分子解析から進める。これまでの本研究の実績で、カラスは時速10~40km程度が一般的であること、普段は4km四方の行動範囲でるが、必要に応じ1日60kmの距離を飛ぶことが分かってきた。このようなカラスの飛翔能力には速筋、遅筋の筋型の構成割合が関連するものと推察される。したがって、その点にも注視し解析を行い最終年度としてまとめて行く。
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Research Products
(11 results)