2013 Fiscal Year Annual Research Report
温度感受性TRPM2チャネルの活性制御機構と免疫応答への関与の解析
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23249012
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Research Institution | Okazaki Research Facilities, National Institutes of Natural Sciences |
Principal Investigator |
富永 真琴 大学共同利用機関法人自然科学研究機構(岡崎共通研究施設), 岡崎統合バイオサイエンスセンター, 教授 (90260041)
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Project Period (FY) |
2011-04-01 – 2015-03-31
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Keywords | 生理学 / 神経科学 |
Research Abstract |
1) 緑膿菌、リステリア菌をマウスに感染させて、生存率および肝臓・脾臓での菌体数を解析した。TRPM2欠損マウスで生存率が低く、両細菌とも数が多い傾向がみられたが、有意な差は得られなかった。2) 脳内の免疫細胞と表現されるミクログリアをマウス大脳皮質から調整してTRPM2のmRNA発現を解析したところ、既報どおり強い発現が認められた。また、カルシウムイメージング法で温度刺激による細胞内カルシウム濃度増加が、腹腔マクロファージと同様に過酸化水素で著しく増強された。しかし、パッチクランプ法でコンスタントにTRPM2電流の過酸化水素による増大を観察することはできなかった。3) 肥満細胞のTRPM2機能を解析した。マウス組織型肥満細胞に強いTRPM2mRNAの発現を認め、野生型マウス肥満細胞で熱によって活性化する直線の電流・電圧関係を示す電流が観察された。この熱活性化電流は、複数のTRPM2阻害薬で抑制され、TRPM2欠損マウスから調整した肥満細胞では観察されなかったことから、TRPM2による電流と結論した。肥満細胞刺激による細胞内カルシウム濃度増加は野生型細胞で有意に大きく、脱顆粒は複数のTRPM2阻害薬で抑制されたことから、肥満細胞の細胞内カルシウム濃度上昇を介した脱顆粒にTRPM2が関わっていることが分かった。個体レベルでの解析で、消化管アレルギーモデルにおける下痢症状が複数のTRPM2阻害薬で抑制された。このことは、肥満細胞を介した消化管アレルギー反応にTRPM2が関わっていることを示している。しかし、過酸化水素による肥満細胞のTRPM2機能の有意な増強は観察されなかったことから、過酸化水素による酸化を介したTRPM2機能増強作用は全てのTRPM2発現細胞で起こっているわけではないものと推定される。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
マウス腹腔マクロファージでは、野生型マウスでみられた過酸化水素によるTRPM2の感作を介すると考えられる熱応答の著しい増強が観察され、それがTRPM2欠損マウスで観察されなかったことから、腹腔マクロファージはTRPM2の過酸化水素による感作の意義を観察する優れた系であると結論できた。その感作機構が、腹腔マクロファージだけでなく、大脳皮質から調整したミクログリアでも観察できたことは、この感作機構の普遍性を示すものである。しかしながら、組織型肥満細胞のTRPM2も脱顆粒をもたらす細胞内カルシウム濃度増加に関与することが明らかになったものの、過酸化水素による感作がはっきりと観察されなかったことから、腹腔マクロファージで観察された過酸化水素による酸化を介したTRPM2機能増強作用は全てのTRPM2発現細胞で起こっているわけではないものと考えられ、より多くの免疫関連細胞の解析を進めていく必要があることが判明した。十分な進展があったものと考えている。
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Strategy for Future Research Activity |
これまでの成果を踏まえ、次のことを進めたい。① マウス腹腔内マクロファージにおけるTRPM2機能の検討 野生型マウスとTRPM2欠損マウスから単離した腹腔内マクロファージで、貪食能とサイトカイン産生能に焦点をあてて比較検討する。さらにレンチウィルスベクターを用いて野生型TRPM2あるいは温度感作に重要なアミノ酸をアラニンに置換した変異TRPM2チャネルを、TRPM2欠損マウスから得たマクロファージに強制発現させた時の効果を検討する。また、野生型TRPM2チャネルを介したマクロファージ活性への効果が、温度上昇に伴って増強し、抗酸化剤の処置により減弱することを確認する。② In vivoマクロファージ活性におけるTRPM2機能の検討 TLRリガンド腹腔内投与時のin vivoマクロファージ活性を、野生型マウス、TRPM2欠損マウス間で比較する。主にマクロファージから産生されるサイトカインIL-1、MIP-2、TNF-α等の経時的変化を測定し、in vitroで得られた免疫活性増強へのTRPM2チャネルの寄与が、in vivoマクロファージ活性でも再現できることを示す。さらに、マウス個体を覆うヒーティングパッド用いてマウスの体表温を制御し、体温上昇がin vivoマクロファージ活性に与える作用と、TRPM2の関与を明らかにする。③ リンパ球細胞のTRPM2機能の関連の解析 野生型マウスとTRPM2欠損マウスから得られたB, Tリンパ球の温度依存性活性(抗体産生能、サイトカイン産生能、細胞障害能等)を比較検討する。④ 免疫関連細胞以外でのTRPM2感作機構の解析 研究室では膵臓β細胞におけるTRPM2機能解析を数多く行ってきたことから、膵臓β細胞に発現するTRPM2が過酸化水素刺激によって感作されるかどうかをカルシウムイメージング法、パッチクランプ法を用いて検討する。
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Research Products
(3 results)