2012 Fiscal Year Annual Research Report
白血病幹細胞の維持と再発・治療抵抗性に関わる遺伝学的基盤の解明
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23249052
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
小川 誠司 東京大学, 医学部附属病院, 准教授 (60292900)
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Project Period (FY) |
2011-04-01 – 2014-03-31
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Keywords | 難治性白血病 / ゲノム / エクソーム解析 / エピゲノム解析 / 大量並列シーケンス |
Research Abstract |
難治性急性骨髄性白血病(AML)の再発に関わる遺伝子変異を探索する目的で、初発時、再発時、および正常(寛解期) DNA検体の得られる種々の病型を含む成人再発AML 33例(t(8;21):10例, t(15;17):8例, FLT3-ITD: 10例, 正常核型ないしMLL-PTD: 5 例)について、全エクソン解析を行った。同定された変異候補についてはすべてサンガーシーケンスによる検証を行った。正常核型AMLを除く各病型で5-10個の非同義置換を伴う体細胞変異が同定された。一方、正常核型AMLでは25-35個の変異が同定された。t(8;21)転座陽性AML(N=10)の解析では計92個の非同義置換変異が同定された。うち47変異は初発・再発に共通する変異であったが、10変異は初発時のみ、35変異は再発時のみに認められる変異であった。KIT, TET2, TTN,および MGAの変異が繰り返し認められた。FLT3-ITD陽性AML(N=10)ではDNMT3A, WT1, RUNX1 and IDH1遺伝子を含む50個の遺伝子に計60個の非同義置換変異が同定され、うち38遺伝子は初発・再発で共通する遺伝子であった。急性前骨髄球性白血病(N=8)では, 61遺伝子に計63 mutations が同定された。MLL-PTD AML(N=5)では, 42 遺伝子に変異が認められ、うち、24 遺伝子が初発時と再発時で共通していた。 APL以外の症例では再発時クローンは初発時に認められた主要なクローンに由来していたが、APLの4例では初発時と再発時で全く異なるクローンに由来することが確認された。一方、再発ALLについては現時点で7例の解析が完了している。今後同定された変異をより多数のコホートが確認することによりこれらの臨床的、生物学的な意義を明らかにする。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
現時点では、再発AMLについては当初の計画の30例を越える症例のエクソンシーケンスが完了しているが、ALLについては解析試料の収集が困難で、現時点で7例の解析にとどまっている。また当初予定の大規模コホートのシーケンスについてはJALSG検体192例について82遺伝子を対象とした変異解析が終了しているが、解析遺伝子数に比較して症例数が未だ少ないため、相対的な統計的解析力が低下しており、今後さらに症例数を増やした解析が必要である。現在解析中である。当初計画したエピジェネティクな異常の網羅的な解析については、現時点では未だChIPシーケンスの基礎的検討が終了したのみで、再私有年度に残された課題である。
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Strategy for Future Research Activity |
最終年度については、 1) 難治性AMLの変異解析については、これまでの33例に加えて総計で50例のエクソンシーケンスを行う。同定された主要な変異について、本年度の192例に加えてさらに計300例についてtargeted deep sequencingを行い、変異頻度、病型・予後との関連について検討を行う。 2) 難治性ALLの解析については、これまで7例の再発ALLの解析が終了しているが、大規模なスクリーニングのための候補変異同定のためには、N=20程度のエクソンシーケンスデータが必要と考えられる。試料の収集の問題に加えて資金的な問題もあり、可能な限りの解析を行う予定である。 3) エビゲノムの解析については、難治性AMLに焦点を絞り、エクソンシーケンスを行った症例について、Infinium450Kにより網羅的なDNAメチル化解析を行うとともに、初発・再発症例について、ChIPシーケンスによりヒストン修飾のゲノムワイドな解析を行うことを予定している。 4) 以上の解析を通じて、白血病の再発に関わる遺伝子変異、エビジェネシスの異常の探索を行い、新規診断・治療の標的分子の同定を行う。
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Research Products
(9 results)