2013 Fiscal Year Annual Research Report
世界の博物館アメリカ―移民と基層文化の再検討によるグローバル地誌の構築―
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23251002
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Section | 海外学術 |
Research Institution | Nihon University |
Principal Investigator |
矢ケ崎 典隆 日本大学, 文理学部, 教授 (30166475)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
山下 清海 筑波大学, 生命環境科学研究科(系), 教授 (00166662)
加賀美 雅弘 東京学芸大学, 教育学部, 教授 (60185709)
根田 克彦 奈良教育大学, 教育学部, 教授 (50192258)
山根 拓 富山大学, 人間発達科学部, 教授 (30222376)
石井 久生 共立女子大学, 国際学部, 教授 (70272127)
浦部 浩之 獨協大学, 国際言語文化学部, 教授 (30306477)
大石 太郎 関西学院大学, 国際学部, 准教授 (70433092)
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Project Period (FY) |
2011-11-18 – 2015-03-31
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Keywords | 地理学 / グローバル地誌 / 移民 / 人口移動 / 博物館 / アメリカ |
Research Abstract |
本研究は、アメリカ合衆国をグローバルな枠組みにおいて地誌学的に再検討するための新しい方法を提示することを目的とする。そのために、表層(新しいものを生み出すアメリカ)と基層(古いものが残存するアメリカ)に着目し、基層を分析するために、移民の流入と移民が導入した文化要素に着目する。そして、アメリカ国内に残存する古い文化要素と移民の出身地における文化要素について現地におけるフィールドワークにより比較対照し、「世界の博物館アメリカ」の実像を地理学的に解明する。本年度は、ロサンゼルスのドイツ系移民とその伝統文化、ネブラスカ州リンカーンとカンザス州南西部のロシア系ドイツ人の伝統文化、アイオワ州エルクホーン・ネブラスカ州ブレア・カリフォルニア州ソルヴァンのデンマーク系移民とその伝統文化、メーン州のフランス系移民とその伝統文化、カリフォルニア州のバスク系移民とその伝統文化、フロリダ州・テキサス州・ニューメキシコ州のラテンアメリカ系移民とその伝統文化、イリノイ州シカゴ・ペンシルヴェニア州フィラデルフィアの中国系移民とチャイナタウン、カリフォルニア州の日系移民とその伝統文化について調査した。それぞれの集団による移民組織と移民博物館につて情報を蓄積することができた。また、ニューヨークとシカゴでは、移民博物館に関する概要を把握することができ、移民博物館に着目して多民族都市を分析することの意義を確認した。移民の出身地の現地調査については、アイルランドとドイツにおいて資料を収集した。1970年代以降、多民族社会に関する認識が高まるにつれて、移民組織や移民博物館が増加しており、近年では、移民文化の観光資源化が進んでいることが明らかになった。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
研究代表者と7名の研究分担者は、それぞれ担当する移民集団を対象として現地調査を進めている。ドイツ系についてはロサンゼルスの最近の状況が明らかになりつつある。ロシア系ドイツ人(特にヴォルガジャーマン)については、アメリカ西部の製糖業のコンテクストで研究成果が論文として公表されたほか、エスニック組織とその活動が明らかになりつつある。デンマーク系については中西部の移民博物館に関する調査が進んでいる。イベリア系移民については、バスクの羊飼いに関する調査が進んでおり、カリフォルニアとバスク地方との交流について研究成果が公表された。フランス系については北東部に関してケベックとの関連において調査が進んでいる。中国系移民についてはチャイナタウンの比較研究が蓄積されつつある。アイルランド系については出身地において基本的資料が収集された。移民の流入が継続しているラテンアメリカ系については、フロリダ州を中心に、特にカリブ海系移民に着目して調査が行われた。以上のように、研究代表者と分担者による事例研究が蓄積されつつある。また、研究代表者は日本地理学会での会長講演においてアメリカ地誌の新しい見方を提示し、1970年代以降のアメリカ社会の多民族化・分断化を踏まえて、21世紀のアメリカ地誌の考察の枠組みとして「世界の博物館アメリカ」の議論の概要を提示した。人や文化の移動・越境に着目したグローバル地誌の構築は極めてチャレンジングな課題であるが、3年間の調査研究で得られた成果を基盤として、新しい提案を行うことが可能だと確信している。以上の理由から、本研究はおおむね順調に進展している。
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Strategy for Future Research Activity |
研究代表者と7名の研究分担者は、それぞれ担当する移民集団に関する事例研究を今後も継続し、学会発表や論文として研究成果の公表に努める。来年度は最終年となるので、そうした個別の成果を持ち寄り、「世界の博物館アメリカ」という新しいアメリカ地誌の考察の枠組みの構築にむけて討議を行う。研究成果を書籍として刊行するための検討も行う。
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Research Products
(11 results)