2011 Fiscal Year Annual Research Report
「シティ・リージョン」を単位とする戦略的社会空間政策再編に関する研究
Project/Area Number |
23254005
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Research Institution | Waseda University |
Principal Investigator |
後藤 春彦 早稲田大学, 理工学術院, 教授 (70170462)
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Keywords | シティ・リージョン / ナレッジ・シティ / スペーシャル・プランニング / 社会空間政策 |
Research Abstract |
EU各国の「スペーシャル・プランニング」においては、広域的な都市・地域圏域の物理的空間を統合した「シティ・リージョン」が計画的に重要な単位となっている。本研究ではさらに、空間計画のみならず、社会空間政策として「シティ・リージョン」を位置づけ、EUにおける戦略的な社会空間政策の方法論を明らかにすることを目的として研究を進めた。 24年度はドイツ(4月)、ドイツ・デンマーク(9月)、フランス(11月)における海外調査を行い、広域都市圏政策や既存の自治体圏域の再編、民間セクターの参画による自治の運営など、各国における都市計画の特徴的な動向を整理した。 ドイツにおいては、民間セクターが広域都市政策に参画していく事例が見られた。産業政策という視点は既存の自治体圏域にとどまらないマクロレベルでの物流や産業クラスターの視点が必要となり、グローバル化する経済社会の枠組みの中で競争力を増すための新たな圏域設定の動きと見ることができる。また、デンマークにおいては、国境を超えた医療や製薬関連の企業の集積がナレッジの集積を生み出し、知識集約型産業を核とした都市圏域を生み出す事例もが見られた。 フランスにおいても、中世以来の地方自治の枠組みの間に、人口増加に対応した都市のフリンジ政策や交通政策、住宅政策を担う新たな圏域設定の動きを見ることができた。その過程においては、基礎自治体の連携によるボトムアップ型のネットワークがつくられ、それぞれの地域の都市政策の方針に合わせた戦略的に圏域を再編していく取り組みが見られた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
海外調査は概ね予定通り実施し、各国のスペーシャル・プランニングの特徴的な動向は整理されつつある。一方で、欧州においても都市圏政策は大きな転換期を迎えており、法改正を伴う新たな動きも見られる。そのため、当初予定していた連続セミナーについてはこれらの動きを見定めつつ、より内実のあるものとするために次年度の開催とし、追加調査を行なうこととした。
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Strategy for Future Research Activity |
24年度に行なった欧州各国におけるヒアリング調査をもとに、ドイツにおける民間セクターを中心とした自治体圏域を超えた新たなガバナンスの仕組みや、フランスにおける基礎自治体の連携によってネットワーク化された広域自治の仕組みづくりといった特徴的事例について、近年の法改正等の変化を踏まえ、必要な追加調査の項目を整理する。そのうえで、EU各国の都市計画理論家を招聘して連続セミナーを開催し、文献調査の理解を深めるとともに、各国の動向を比較分析を行いながら研究を総括する。 本年度は、フランス、ドイツへの海外出張費を計上するとともに、海外からの研究者の招聘旅費、および収集した資料等の翻訳整理のためのアルバイト代を計上している。また、研究成果のとりまとめに向け、海外研究に関する豊富な実績を有する研究補助者を雇用する予定である。
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