2012 Fiscal Year Annual Research Report
汎ヒマラヤ地域の植物相に関する遺伝的多様性と種多様性にもとづく系統分類学的解析
Project/Area Number |
23255005
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Section | 海外学術 |
Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
池田 博 東京大学, 総合研究博物館, 准教授 (30299177)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
小山 鐵夫 公益財団法人高知県牧野記念財団, 財団理事長, 理事長 (00205535)
大場 秀章 東京大学, 総合研究博物館, 名誉教授 (20004450)
藤川 和美 公益財団法人高知県牧野記念財団, 研究部植物研究課, 研究員 (60373536)
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Project Period (FY) |
2011-11-18 – 2015-03-31
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Keywords | ヒマラヤ / 系統分類 / 遺伝的多様性 / 種多様性 / 植物相 |
Research Abstract |
本研究は、ヒマラヤ及び周辺地域に生育する植物に関して、多様性の基礎となる植物誌をつくるための調査(インベントリー調査)と特定の植物群に関する解析的調査を進めることを目的とする。平成24年度は、7月に極西ネパール・ダルチュラ (Darchura) 地域で、8月に東ネパール・ジャルジャレヒマール (Jaljale Himal) 地域で現地調査をおこなった(池田 2012a, 2012b)。 ダルチュラ地域を含む極西ネパールは、これまでほとんど植物調査隊が入っていない地域で、ネパールの植物調査の空白地域となっていたことから、インベントリー調査を主とした調査をおこなった。約3週間の現地調査により、約1150点のおし葉標本を作製した。持ち帰った標本は現在同定を進めるとともに、興味ある種に関してはさらに詳しい分類学的解析が進められている。 ジャルジャレ・ヒマールでは、おもに解析的研究が進められた。調査メンバーには、生理学、送粉生態学、細胞遺伝学、分子系統学の専門とする研究者がおり、各自の興味のある植物について調査・観察を進めた。これまでに、シャクナゲ類の生理生態的研究 (種子田 2013)、セーター植物の送粉生態(中路 2012)、カヤツリグサ科カヤツリグサ属の送粉様式 (Yano et al. 2013a) 等については、すでに公表した。また、ヒマラヤに特徴的なカヤツリグサ科 Erioscirpus 属について、その系統的位置関係について議論をおこなった (Yano et al. 2012)。さらに、調査の過程で見出された生物地理学的知見については、逐次報告をおこなっている (Ikeda et al. 2012, Yano et al. 2013b, Devkota & Ikeda 2013, Shakya et al. 2013)。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
前年度は現地調査を予定通りに進めることができなかったことから、平成24年度は確実に調査できるネパールで現地調査をおこなった。前年度の推進方策として、現地調査にインベントリー調査と解析的調査の性格を明確にして実施するのがよいであろうということから、今年度はインベントリー調査を主体とする極西ネパール地域と、解析的調査を主体とする東ネパールでの調査を実施した。その点ではかなり効率よく調査ができたのではないかと考える。 ただし、調査により収集されたおし葉標本および解析用のサンプルについて、未だ充分に整理がなされていない状態である。極西ネパールで採集したおし葉標本は、採集地、採集者等を記入したラベルを入れ、それぞれの科ごとに分ける段階までは進んでいる状態であるが、同定作業はまだ終わっていない。また、現地で収集した細胞遺伝学的解析のためのサンプル、分子系統学的解析のためのサンプルもかなりの点数収集してきているが、まだ充分に解析がなされていない。 また、現地調査の範囲について、本プロジェクトは「汎ヒマラヤ」に分布する植物に関する遺伝的多様性、種多様性の解析ということで、ヒマラヤの周辺地域も調査対象とする予定であったが、現地のカウンターパートとの交渉の問題等もあり、平成24年度はネパール一国でおこなうこととなった。もう少し範囲を広げた調査を進める必要があると考える。
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Strategy for Future Research Activity |
今後については、収集したおし葉標本については速やかに同定作業を進め、リスト化する必要がある。特に極西ネパールの標本については、これまであまり採集がなされていない地域でもあることから、とりまとめをおこない、地域植物誌(フロラ)として発表をする予定である。そのためにも早急な同定作業が求められる。 また、細胞遺伝学的解析に用いるサンプル、分子系統学的解析に用いるサンプルについては、分類学的・系統学的に面白いと思われる分類群を中心として、解析を進める必要がある。解析のための機材・装置については、東京大学あるいは各分担者、協力者の研究室に設置されていることから、効率的なサンプルの分担を考慮し、速やかな解析を進めることが重要である。 現地調査については、ヒマラヤ以外の地域での調査も考える必要がある。現在最も有力な調査地は中国・雲南省である。雲南省北西部から四川省南西部にかけて広がる横断山脈は、ヒマラヤに分布する種と類縁が近いものが多く、比較のためにも同地域での調査が望まれる。雲南省にある中国科学院昆明植物研究所の副所長である楊永平博士とは代表者は長年の交流があり、共同調査・研究を前向きに考えてくれている。この機会に雲南省での調査を実施するのがよいと考える。したがって、インベントリー調査を主体とした現地調査を中国雲南省で、解析的調査を主体とした現地調査をネパール・ジャルジャレ地域でおこなうというのがよいと考える。ジェルジャレヒマールで調査をおこなう場合、種類によって花の咲く時期が異なることから、時期をずらしておこなうのがよいと考える。平成24年度は8月におこなったことから、平成25年度は時期を変え、6月から7月の時期に実施するのがよいと考える。
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Research Products
(19 results)