2014 Fiscal Year Annual Research Report
東南アジアにおける農業土木学的視点からのSRI栽培技術の比較と標準化手法の開発
Project/Area Number |
23255014
|
Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
溝口 勝 東京大学, 農学生命科学研究科, 教授 (00181917)
|
Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
山路 永司 東京大学, 新領域創成科学研究科, 教授 (10143405)
小林 和彦 東京大学, 農学生命科学研究科, 教授 (10354044)
吉田 貢士 茨城大学, 農学部, 准教授 (20420226)
土居 良一 東京大学, 農学生命科学研究科, 助教 (20587125)
鳥山 和伸 独立行政法人国際農林水産業研究センター, 生産環境領域, 専門員 (30355557)
横山 繁樹 独立行政法人国際農林水産業研究センター, 社会科学領域, 主任研究員 (30425590)
荒木 徹也 東京大学, 農学生命科学研究科, 准教授 (40420228)
登尾 浩助 明治大学, 農学部, 教授 (60311544)
|
Project Period (FY) |
2011-04-01 – 2016-03-31
|
Keywords | SRI / 農業技術 / 灌漑排水 / 稲作 / 気候変動適応策 |
Outline of Annual Research Achievements |
東南アジア4カ国のSRI 農法の特徴を整理し、SRI栽培の標準的な方法を提案するするために、現地モニタリングと実験調査を実施した モニタリング:設置したモニタリング機器を用いて、各国の気象・土壌等に関するデータを収集し、同一基準での表示ツールを作成した(溝口)。 実験調査:(1)インドネシア:中部ジャワにおいて農業省および地方行政組織による稲作指導状況を明らかにした。また、SRI指導を受け実施している農家を対象にヒアリング調査を行い営農の目標と導入理由との関係を聞き取った(山路・荒木)。多収穫SRI農家で水稲の生殖成長期に好気的水管理を実施し、その管理が乾物重や収量増加にプラスに影響することを明らかにした(鳥山)。SRI栽培試験と普及活動の実態を調査し、有機SRI栽培は小規模兼業農家が多い地域では普及が進まないことを明らかにした(横山)。(2)タイ:カセサート大学の実験水田において、SRI区と従来区でSRIに適した水稲品種の選別をおこなった。また、実験期間(乾期と雨期)中に各実験区で土壌水分量 、マトリックポテンシャル、水深、日射量、風速、気温、湿度を測定した(登尾)。SRI代替型、あるいは超越型と目される現地の水稲栽培技術の定性的・定量的評価を行った(土居)。(3)カンボジア:SRIの採用が稲作作業時間と水稲収量へ及ぼす影響に焦点を当てて、要因解明を進めた。具体的には、インターバルカメラによる作業時間の計測をさらに精密化して、データの蓄積を図った。また、SRIと慣行農法圃場における水稲生育と収量、および栽培技術等の違いを追究した(小林)。(4)ラオス:ラオス大学農学部のSRI圃場において、気象要因、水管理、生産性に関する調査を行った。また、作物生長モデルを援用することにより、土壌中における水分状態の違いが、稲の窒素吸収効率に及ぼす影響を評価した(吉田)。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
モニタリング:各国の気象・土壌・水分ストレス・イネ生育に関するデータを同一基準で測定し、表示できるようになった(溝口)。 実験調査:(1)インドネシア:概ね順調である(鳥山)。経済成長が進み非農業雇用機会が増え農家の自家労賃評価が高まっているインドネシアにおいては、労働投入の多さと煩雑な肥培管理がSRI普及の制約要因となっていることがわかった(横山)。(2)タイ:概ね順調に進捗しているが、水田に設置した測定器の不具合が起きる場合があるので、近隣の気象観測所からもデータを得られるよう交渉する必要がある(登尾)。当初、タイでのSRI実施農家での調査を想定していたが、タイではSRIが一部の試験場以外ほとんど進んでいないことが判明した。他方で、SRIの欠点を回避しつつ現地の社会・経済および自然環境に適応したSRI超越型ともいうべき稲作技術の広がりと技術的効果を評価した(土居)。(3)カンボジア:天水稲作地帯へのSRIの導入における、稲作農家の論理の理解に近づいている(小林)。(4)ラオス:SRI圃場における間断灌漑条件下では、常時湛水圃場と比較して硝酸態窒素濃度が高いこと、またそれが稲の窒素吸収効率の向上をもたらすことが示された(吉田)。
|
Strategy for Future Research Activity |
各サブテーマの推進方針はいかの通りである。 モニタリング:日本国内に設置したモニタリング装置を使って、データ収集と表示ツールを完成させる(溝口)。 実験調査:(1)インドネシア:最終年度は、土壌の酸化還元電位の測定を行い、生育ステージ毎の水管理と土壌酸化還元環境の関係を確認する。また、生殖成長期の落水が無効茎を減少させている可能性があるので明らかにする(鳥山)。インドネシアでは所得水準の向上に伴って地方都市においても有機農産物の市場が成長しつつある。SRI普及促進へ向けた有機SRI米のマーケティング戦略について調査を行う(横山)。(2)タイ:引き続きタイ国の実験水田においてSRIに適した水稲品種の選抜を続ける。その後は、選抜した数品種を使ってタイ国と日本国において実証実験を実施する(登尾)。また、現地生産者サークルによるSRI超越型栽培法の技術的裏付けを土壌生化学や生態学的な視点から詳細に検討する(土居)。(3)カンボジア:南部の天水稲作農家にとってのSRI導入の意義を、水稲栽培技術と水稲生育の両面から解明する(小林)。(4)ラオス:本年度の結果から得られた知見について再現性を確認するため、引き続き圃場での観測を継続するとともに、これまでラオス圃場で実施した3年間の観測結果についてとりまとめを行う(吉田)。 最終年度に向けてこれまでの研究成果を取りまとめて、農業土木学的視点からSRI 農法の特徴を整理し、SRI栽培の標準的な方法を提案する。加えて、現在懸念されている気候変動に対する適応策として、各国の農家が取り得る最善策を水資源・農地管理に焦点を当てながら考察する。
|
Remarks |
J-SRI研究会を6回開催
|
Research Products
(14 results)