2011 Fiscal Year Annual Research Report
チベット-トランスヒマラヤ高山草原における生態系保全型放牧システムに関する研究
Project/Area Number |
23255015
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Research Institution | University of Miyazaki |
Principal Investigator |
長谷川 信美 宮崎大学, 農学部, 教授 (50281217)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
西脇 亜也 宮崎大学, 農学部, 教授 (60228244)
井戸田 幸子 宮崎大学, 農学部, 助教 (40325733)
平田 昌彦 宮崎大学, 農学部, 教授 (20156673)
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Keywords | 生態系保全 / 草食家畜 / 放牧システム / 高山草原 / 国際研究者交流 / 中国:インド:ドイツ |
Research Abstract |
放牧草食反芻動物種と放牧方式(遊牧・移牧)の違いが高山草原生態系へ及ぼす影響を明らかにすることを目的として、中国とインド国で以下の調査を行った。 1.チベット高原における放牧動物種と放牧方式が高山草原生態系に及ぼす影響:中国青海省玉樹蔵族自治州玉樹県において、平成24年3月にヤクの放牧行動観察を行った。行動を2分間隔で記録し、排糞・排尿回数を記録した。採食行動観察でバイト数と歩数を記録し、GPSにより行動位置軌跡を記録した。牧畜農家経営調査を行い、家族構成・飼育家畜頭数・年間管理作業スケジュール・収入について聞き取りを行った。調査地域は記録的な大雪災害のため、ヤク数万頭が餓死した。実施予定だったヒツジの行動観察は、ヒツジを放牧すると採食できず餓死する恐れがあったため中止した。また、クチグロナキウサギの巣穴数調査も中止した。 2.インド国ジャンムー・カシミール州における遊牧が高山草原生態系に及ぼす影響:平成24年2月にジャンムー地域において、遊牧民バックラワル族の冬営地3カ所で、経営調査を聞き取りにより行った。バックラワル族は小グループごとにヤギ3000~5000頭を管理し、全体では約2万頭を超えるヤギを飼育していることが明らかとなった。それぞれのグループごとに移動し、およそ180km離れたカシミールのダシガン国立公園で夏期の3~4ヶ月間を過ごす。その移動経路調査をジャンムーとカシミールで行った。40年ぶりの大雪のため通行できなかったジャンムーとカシミールの中間に位置する山塊を除く経路をGPSにより記録した。 3.チベットートランスヒマラヤ高山草原植生の時空的変動:^<13>C分析用のヤクの尾毛を中国青海省玉樹蔵族自治州玉樹県と海北蔵族自治州門源回族自治県で採取した。ミュンヘン工科大学の協力で分析する。また、GPS測位により位置の確認できた調査地域のALOS観測画像解析を開始した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
インドも中国も、記録的な大雪のため、予定していた調査の一部を実施することができなかったが、全体としてはおおむね順調に進展している。
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Strategy for Future Research Activity |
平成24年度は8月に中国でヤクとヒツジの行動観察、植生調査、牧畜農家経営調査、クチグロナキウサギ生息環境調査、春と秋にヤク尾毛を採取し^<13>C分析を行う。 インドでは、9月にダシガン国立公園内遊牧地域での放牧頭数調査、植生調査、移動経路調査を行う。調査許可を、ダシガン国立公園野生動物保護局長およびジャンムー・カシミール州畜産草地局長に依頼済みである。 春と秋にラダックのツォ・カル湖周域遊牧民飼育ヤクの尾毛を採取し^<13>C分析を行う。 インドおよび中国で加速度計をヤク・ヒツジ・ヤギに装着して計測し、放牧動物種の採食行動様式の違いを明らかにする。
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