2012 Fiscal Year Annual Research Report
言語の起源と進化を探求するための超越性に対する複合的アプローチ
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23300085
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Research Institution | Japan Advanced Institute of Science and Technology |
Principal Investigator |
橋本 敬 北陸先端科学技術大学院大学, 知識科学研究科, 教授 (90313709)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
藤田 耕司 京都大学, 人間・環境学研究科(研究院), 教授 (00173427)
岡ノ谷 一夫 東京大学, 総合文化研究科, 教授 (30211121)
金野 武司 北陸先端科学技術大学院大学, 知識科学研究科, 特任助教 (50537058)
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Project Period (FY) |
2011-04-01 – 2014-03-31
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Keywords | 超越性 / コミュニケーション / 描画実験 / 実験記号論 / ソース・ターゲット関係 / 自他の仮説形成 / 複合的アプローチ / 超越的コミュニケーション |
Research Abstract |
言語の起源と進化を探求するための人間言語の特性として超越性に着目する.本研究では超越性の機能的意義を「他者の知らない知識を伝達すること」と捉え,コミュニケーションで聴取者が知らない事柄を発話者が伝える「超越的コミュニケーション」を分析してきた.具体的には,実験記号論で開発された描画コミュニケーション課題で,描画者(コミュニケーションにおける話し手)がある対象について描画で受け手(聞き手)に伝えようとし,受け手は描かれた内容を推測する.これを何回か繰り返し,描画,答え,発話思考の変化を観察・分析する.この実験では描画対象として,聞き手の記憶にある対象とない対象を「形容詞+名詞」の形で与える.聞き手の記憶にない対象の場合,名詞が何かを特定できなければ形容詞の理解が難しいこと,名詞+形容詞はソース・ターゲット関係として理解されていることが示唆された.このソース・ターゲットの関係について相手の理解の仮説を相互に推定することを繰り返す過程として,超越的コミュニケーションが達成されるコミュニケーションシステムができるという枠組みを提示した. また,視線コミュニケーションの発達モデルをもとに人同士の視線コミュニケーションの予備実験を行った.この実験では、被験者の間に数字や図形などを描いたカードを並べ被験者が共同の意思決定を行う.この課題自体は視線による直示的なコミュニケーションを行うものであるが,カードに描かれたものを推定するだけではない意思決定も必要となる.たとえば,「数字」を合意したり「合意した」ということを合意する.そのような予め取り決められていないルールがどのようにできるかを見ることで,視線という直示的なコミュニケーション手段が,超越的なコミュニケーションのどこまでをサポートできるかを分析することで,「内部モデルの推定・操作」についてのモデルを発展させる基礎を得る.
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
「超越性の生物言語学的分析」として,生成文法理論における転移(displacement)と超越性の関係について言語学的分析を行い超越性の言語的性質について検討を進めることを計画していた.転移では,直接的に意味解釈される場所から離れる統語操作,あるいは,そのような操作能力の存在が示唆される.本研究では,ソース・ターゲットの関係の推定が超越的コミュニケーションを達成する重要な段階であることが見出された.ソース・ターゲット関係は,本研究では一種の主語・述語の関係と考えられる.主語=名詞が特定され,それによって述語=形容詞が特定されやすくなるというのは,主語・述語の統語操作と関係していることが示唆される.これにより超越性実現の認知基盤の理解が一歩進んだと言える.しかしこれは元々企図していた生成文法理論における転移(displacement)との関係の検討に進むと言うより,認知言語学理論的な分析へと進むものである.一方,生成文法理論的な分析はまだ十分には進んでいない.
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Strategy for Future Research Activity |
本研究で開発した描画コミュニケーション実験では,コミュニケーションメディアとして通常の自然言語ではなく描画を用いている.これにより,超越的コミュニケーションを行う認知能力を持つ成人を被験者に用いているが,初めから超越的コミュニケーションが成功するわけではなく,成功に至る過程を分析できている.また,表現の自由度が高く共有する背景知識も膨大である自然言語ではなく,線画をある決められた時間内に描かせることで,相手が理解しやすく描きやすい描画表現を用いるようになり,自然言語よりも単純で認知的および記号論的な分析がしやすい.このような利点から,これまでの研究では,この実験を超越性を可能にしている認知過程の観点で分析してきた.一方,新しい手話言語の言語進化過程の分析では,超越的表現が世代を経て可能になることが観察されている.数世代で認知能力が進化したとは考えにくいので,超越性を可能にするように手話言語が発展(文化進化)したと考えたほうがよい.本実験では,記号論的な分析も可能であることから,記号システムの文化進化という観点(実験記号論の観点)でも検討を進める. この記号論的・文化進化的分析により,転移の言語学的分析の間の橋渡しもやりやすくなると考えられる.これまでの認知的分析をさらに進めることで,コミュニケーションにおける相互の仮説形成とう観点で語用論との関係についても,明らかになる. また,この課題を元に脳波計測を可能にするような実験課題構築を行い,脳波計測を実施する. 視線コミュニケーションの本実験と,ロボットへの実装についても進める. さらに,オノマトペという言語現象について検討する.オノマトペは擬音語・擬態語であり,音象徴として形成され超越的ではないと考えられやすいが,やはり聞き手が体験していないことを理解させることに役立っている面がある.
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[Journal Article] Ecological correlates of song complexity: a case study in white-rumped munias - the implication of relaxation of selection as a cause for signal variation in birdsong2012
Author(s)
Kagawa, H., Yamada, H., Lin, R.-S., Mizuta, T., Hasegawa, T., & Okanoya, K.
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Journal Title
Interaction Studies
Volume: 13(2)
Pages: 263-284
DOI
Peer Reviewed
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