2012 Fiscal Year Annual Research Report
イーリサーチとオープンアクセス環境下における学術コミュニケーションの総合的研究
Project/Area Number |
23300089
|
Research Institution | Keio University |
Principal Investigator |
倉田 敬子 慶應義塾大学, 文学部, 教授 (50205184)
|
Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
上田 修一 慶應義塾大学, 文学部, 教授 (50134218)
松林 麻実子 筑波大学, 図書館情報メディア研究科(系), 講師 (10359581)
三根 慎二 三重大学, 人文学部, 講師 (80468529)
|
Project Period (FY) |
2011-04-01 – 2014-03-31
|
Keywords | 学術コミュニケーション / デジタルメディア / e-Research / 学術雑誌 / 紀要 / オープンアクセス / 専門情報の一般普及 / 電子ジャーナル |
Research Abstract |
1 e-Researchの実態については,研究者26名へのインタビューのうち「データ共有」の実態と意識に関して,昨年度作成したモデルに従い,再カテゴリ化を行った。現在統計分析にかけてより特徴を明確にできないか検討中である。この結果は原著論文として投稿する。 2 学術コミュニケーションの電子化の実態については,日本の学術雑誌3000誌を対象に電子化状況,編集状況などを質問紙調査した。回収率は48%,査読制は76%が採用し,インパクトファクターは3.8%しか付いていなかった。電子的に提供している雑誌は49.3%,電子化の手段として多かったのはCinii Article,独自サイト,J-STAGEであった。2013年5月に日本図書館情報学会研究大会で発表する。 さらに,一般にデジタルリーディングがどこまで広がっており,多様な状況で紙とデジタルのどちらを好むかの意識について全国1755人を対象にインターネット調査を行った。読んでいる時間の約7割がウェブ等のデジタルテキストであったが,紙の本とウェブサイトは長時間読まれる傾向にあった。他方意識としては紙を好むと回答する傾向にあった。日本図書館情報学会で発表したが,現在より詳しい分析を行い,英語原著論文として投稿予定である。 3 オープンアクセス状況に関する実態については,東日本大震災後に一般の人々が科学技術の専門情報全般に関してどれだけの情報要求を持ち,実際に情報を探索したかについての質問紙調査(全国1200人対象)の結果をthe information behaviour conference(ISIC2012)で発表した。さらに情報探索者の特徴について統計分析を行った。この両方の結果をまとめて英語論文として投稿する予定である。また,これまで行ってきた生物医学分野のOA動向調査結果を再分析し,PLOS ONEに投稿し,受理された。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
3つの柱を立てて研究を進めてきたが,1のE-Researchの現状に関する研究者の意識調査は分析がかなり大変でとりまとめに苦労はしているが,なんとか論文への目処が見えてきた。このトピックで論文として成果を発表できれば次の研究の方向が見えてくることが期待される。 2の電子化状況に関しては,日本の学術雑誌全体の状況に関する調査を行い,目標の基本はクリアできたと考える。さらに,一般人のデジタルリーディング調査を行うことで,より広い文脈での電子化の位置づけのきっかけがつかめてきた。 3のオープンアクセスの動向に関しては,専門情報の一般人の利用に関しては国際学会で発表でき,論文の構成もほぼ完成しつつある。さらに2006年から継続的におこなってきた生物医学分野のオープンアクセス状況に関して,今回,論文として投稿し,受理された。これによりこのトピックに関しては一応の集大成ができたと考えている。
|
Strategy for Future Research Activity |
今後も3つの柱で研究を進めていく計画に変更はない。1のe-Researchの現状に関しては,「データ共有」に関する研究者の意識に関する論文を完成させるとともに,e-Research, eScienceについて関心が高まってきているので,その範囲,特徴,必要とされる要件,課題をとりまとめて,広く普及する活動もおこなっていきたい。 2の電子化状況に関しては,日本の学術雑誌の現状調査の結果を発表するとともに,個別の事例や関係諸機関へのインタビュー,訪問調査も行うことで考察を深めていきたい。また,米国・英国以外の国々の学術雑誌の電子化状況も調査することで,国際的比較から日本の位置を確認していきたい。 3のオープンアクセスに関しては,一般人の科学技術情報へのニーズと探索行動,および生物医学分野のOA動向については成果発表が順調に進んでいるため,一般人による医学論文の利用の現状に関する調査に集中していき,本研究課題の修了までに何とか成果を示せるようにしていきたい。 来年は本研究課題の最終年に当たるため,これまでの研究成果をとりまとめるとともに,成果報告会を開催し,この3年間の成果を広く公表するとともに,関係する研究者,図書館員,院生,その他の関係者とのディスカッションにより,学術コミュニケーション,オープンアクセス,イーリサーチに関する関心を高め,知識,情報の共有を図っていきたいと考える。
|
Research Products
(12 results)