2011 Fiscal Year Annual Research Report
大型類人猿の他者理解と自己理解に関する比較アイトラッキング研究
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23300103
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Research Institution | Kyoto University |
Principal Investigator |
平田 聡 京都大学, 霊長類研究所, 特定准教授 (80396225)
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Keywords | 比較心理学 / 比較認知科学 |
Research Abstract |
アイトラッカーによる視線計測を手法として、大型類人猿およびヒトを対象に、自己理解と他者理解について検証する比較研究をおこなった。まず、他者の行為の理解について調べるために、生後8カ月、12ヶ月のヒト乳児と、ヒト成人、およびチンパンジーを対象として、モデルとなる人物が様々な種類の行為を演じるビデオ映像を見た際の視線の動きを分析した。その結果、チンパンジーは、ヒトの成人と同じく、他者がある目的に到達する以前にその目的を予測し、視線を向けることがわかった。しかし、ヒトとチンパンジーとの問で、他者の行為理解のスタイルが明確に異なっている点も見出された。ヒト、とくにヒトの乳児は、他者の行為を観察する間、チンパンジーに比べて、長時間、他者の顔に視線を向けることがわかった。チンパンジーは、他者の顔を見ることは非常に少なく、一貫して物に視線を向けた。ヒトは、操作されている物と、操作する他者の情報を統合させて行為の目的を予測し理解するスタイルをとるのに対し、チンパンジーは主に物の情報、たとえば物と物との因果関係に注目して、行為を予測、理解することが明らかとなった。次に、メガネ型アイトラッカーをチンパンジーに適用する訓練をおこない、これに成功した。特殊なメガネを装着した状態で、日常的な行為の中でチンパンジーが環境のどこに注意を向けるのかについて調べる基礎を整えることができた。さらに、何種類かの道具使用場面を設け、この場面においてメガネ型アイトラッカーを装着したチンパンジーの視線の動きを分析することを通じて、チンパンジーの自己身体理解を検討した。その結果、自己の次の行為の目的に応じて的確に予測的に視線を運んでいることが示された。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
他者理解に関するヒトとチンパンジーの比較アイトラッキング研究の成果を、権威ある速報系の国際学術誌のひとつに論文として公表することができた。また、メガネ型アイトラッカーをチンパンジーに適用することに成功し、海外に類例のない研究を展開する基盤を整えることができた。チンパンジー以外の大型類人猿であるボノボとオランウータンについても実験実施の準備を進めている。以上のことから、おおむね順調に進展していると評価できる。
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Strategy for Future Research Activity |
研究は順調に進展しており、当初の計画に比して大きな変更は必要でない。年度途中に所属変更となったが、前所属機関にも継続して訪問することができ、同所に飼育されているチンパンジーを対象とした実験研究を本課題終了年まで実施することができる。さらに、現所属先に飼育されているチンパンジーを新たに対象に加えることができる。ボノボとオランウータンを対象とした研究を順次進める計画である。
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Research Products
(9 results)