2012 Fiscal Year Annual Research Report
時空間現象データの統計モデリングと当該現象の定量的把握の研究
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23300106
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Research Institution | Kyushu University |
Principal Investigator |
西井 龍映 九州大学, マス・フォア・インダストリ研究所, 教授 (40127684)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
田中 章司郎 島根大学, 総合理工学研究科(研究院), 教授 (00197427)
小西 貞則 中央大学, 理工学部, 教授 (40090550)
坂田 年男 九州大学, 芸術工学研究科(研究院), 教授 (20117352)
清水 邦夫 慶應義塾大学, 理工学部, 教授 (60110946)
前園 宜彦 九州大学, 数理(科)学研究科(研究院), 教授 (30173701)
二宮 嘉行 九州大学, 学内共同利用施設等, 准教授 (50343330)
増田 弘毅 九州大学, 学内共同利用施設等, 准教授 (10380669)
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Project Period (FY) |
2011-04-01 – 2015-03-31
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Keywords | 時空間現象モデリング / モデル評価 / 時系列解析 / エッジワース展開 / スパースモデリング |
Research Abstract |
本研究の目的は実際の時空間現象から得られる種々のデータについて,統計モデルの開発を行い, 当該現象の特徴を把握し, モデルの理論的性質を解明することである.今年度得られた研究成果は次の通りである. (1) 人口密度と起伏量を説明変数, 森林被覆率を目的変数とするメッシュで観測した格子状のデータに関する回帰モデルについて, 近傍画素からの影響をモデル化した空間依存性をもつ0-1インフレート分布を提案した. また巾変換やスプライン関数により, 説明変数の影響の非線形性をモデル化した. (2) 磁気嵐指数を自己回帰および太陽風の物理量から予測する最適なARXモデルを選択した. また分散も変化するモデルを考察し, 新しいモデル評価基準を提案した. (3) 高頻度観測されるNormal inverse Gaussian過程の局所漸近正規性を導出した.夜間・昼休みの経済高頻度データへの影響を加味したボラティリティの推定手法を定式化し,実証分析でその安定性を示した.また Tempered stable Ornstein-Uhlenbeck過程の遷移確率構造を導出した.(4) 非線形関数で構成した基底関数のそれぞれのウェイトに事前分布を設定して,予測に有効なスパースなモデルを構築する関連ベクターマシンについて,これまでの研究実績をもとに研究を推進し,本年度は様々な事前情報をモデルに取り組むベイズアプローチによる非線形回帰予測分布モデルの構成法,モデルの推定法と評価法について研究した.(5) カーネル型確率点推定量に関するエッジワース展開を求め,その有効性を示した.さらにカーネル型確率密度関数推定量の高次のエッジワース展開を具体的な形で求めることに成功した.また順位検定統計量の連続化を提案し,離散統計量の有意確率についての問題点が解消できることを示した.
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
森林被覆率の非線形回帰モデリングについては, 提案したモデルを一般化加法モデルと比較して優位性を示し, Environmental and Ecological Statistics での掲載が決定した (デジタル版としては発表済み). また磁気嵐に対する太陽風の影響評価については, 均一分散および分散にGAMを仮定したARXモデルを適応し, 有効性を評価した. この研究では旧来の回帰モデルの評価で用いられる決定係数を一般化する必要がでてきたため, 分散が一定ではないときの決定係数, さらには一般の統計モデルに対する絶対評価値の研究のアイデアが得られ, 本研究と並行して研究することとなった. また㈱マツダとの共同研究では, 回帰モデルにおける実験計画の設計により車体軽量化の基盤技術となる手法を提案した. さらに, ARXモデルとそのモデル選択にもとづく車輌の位置予測の手法の提案により特許を取得した. 一方 研究分担者は風向を用いた海面水位の時空間予測モデルや金融市場の経済時系列モデル開発と実証分析により, 有効な統計モデル開発に成功し, 国内外の雑誌に研究論文を発表している. また 理論的な研究面においても, 共同研究者が中心となって, 統計モデルの開発や推定量の漸近的性質の導出を行い, 情報発信ができている. 以上のことから本研究は予定通りの研究成果を上げていると自己評価する.
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Strategy for Future Research Activity |
主として環境に関する時空間データへの統計モデリングについて, 引き続き次のように研究を進める. (1) 森林被覆率の非線形回帰モデリングについては,標高のモデル化をより詳しく検討する. 解析しているメッシュデータには, 1つのメッシュに複数の標高が観測されている. 現在のモデリングでは最大標高から最小標高を引いた起伏量を説明変数としている. そこで 平均標高そのものや標高のばらつき等を説明変数として取り入れた時空間モデルを検証する. (2) 地表面をメッシュ状に観測した多重分光画像が与えられているとき, 各メッシュの森林・畑等の土地カテゴリの被覆割合を推定する問題は unmixing と呼ばれている. この問題に対して, 被覆割合の事前分布としてディリクレ分布を仮定した空間依存性を持つベイズモデルを開発し, MCMCによりカテゴリ割合を推定する. (3) 大きな地震の余震を取り除くモデル化により, マグニチュード3,4の弱い地震に対する太陽風の影響を評価する. なお通常の分散一定のモデルと同時に, 分散もモデル化したARXモデルで地震の頻度やエネルギーを予測し, 太陽風だけの影響を抽出する. また誤差が非ガウスの場合も考察する. 一方 研究分担者が中心となって, 時系列解析や高次元説明変数をもつ回帰分析のモデリング, および推定量の漸近的性質の導出について研究する.
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