2011 Fiscal Year Annual Research Report
新規脳傷害モデル「光傷害」における脳組織再生とネスチン陽性活性化アストロサイト
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23300133
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Research Category |
Grant-in-Aid for Scientific Research (B)
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Research Institution | Kobe University |
Principal Investigator |
森田 光洋 神戸大学, 理学(系)研究科(研究院), 准教授 (50297602)
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Keywords | 脳傷害 / アストロサイト / 神経幹細胞 / 脳組織再生 |
Research Abstract |
頭部外傷や脳梗塞といった脳傷害に伴う脳組織の変性と再生を治療によってコントロールすることは臨床上重要な課題である。しかし、臨床においてしばしば見られる脳組織再生は、これを再現する動物モデルが存在しないため、十分な研究が行われていない。我々が独自に開発した閉鎖性脳傷害モデル「光傷害」を組織学的に解析したところ、損傷周辺部位が再現性高く神経組織再生を示した。さらに、この再生部位にはネスチン陽性活性化アストロサイト(以下NRA)の顕著な集積が見られた。本年度はこれらの結果を報告するとともに、NRAが脳組織再生に果たす役割を解明するために、「NRAの運命決定」と「NRA除去が脳組織再生に与える影響」について実験的検討を進めた。神経幹細胞のマーカーであるネスチンを発現するNRAは多分化能を有し、脳組織再生に必要な神経細胞などの脳機能細胞を供給する可能性がある。この点を検討するため、ネスチンプロモーターの下流で不可逆的にGFPを発現するトランスジェニックマウスを利用してNRAを標識し、NRAの運命決定を行った。その結果、組織再生過程に伴って増加したNRAは損傷1ヵ月後には大部分が除去され、残ったNRAは正常アストロサイトに分化していた。このことからNRAは組織再生の足場として一時的に産生される細胞であることと考えられる。また、NRAが組織再生に必須であることを明らかにする目的でネスチンプロモーターの下流でStat3遺伝子を破壊するトランスジェニックマウス利用し、NRAの除去を行った。その結果、NRAの減少は損傷部位の拡大を引き起こした。このことからNRAが損傷部位における組織保護と組織再生の両方に不可欠であると考えられる。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
本研究はH23年度中に終了する予定であったが、我々の研究グループがH23年度より神戸大学で本格的に活動を開始したことや、共焦点レーザー顕微鏡の購入に際して機種の選定と導入に時間がかかったことなどから、H25年度に繰り越して行われた。しかし、結果的には予定していた実験的検討を完遂することができ、現在、学会や学術雑誌における発表の準備段階にある。これらの点から、現在の達成度は「やや遅れているが目的は十分達成されている」ということができる。
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Strategy for Future Research Activity |
H24年度に予定されていた実験的検討として、Stat3に対する抑制因子であるSocs3の破壊が脳組織再生に与える影響を光傷害モデルにおいて検討する。H23年度の結果から、Stat3の実験結果を補完する結果が得られると期待される。またH24年度は、あらたに組織再生部位における神経細胞の構造と機能の回復に関して組織学的、および生理学的検討を開始する。
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