2011 Fiscal Year Annual Research Report
科学技術ガバナンスの形成のための科学教育論の構築に関する基礎的研究
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23300283
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Research Institution | Shizuoka University |
Principal Investigator |
熊野 善介 静岡大学, 教育学部, 教授 (90252155)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
内ノ倉 真吾 静岡大学, 教育学部, 准教授 (70512531)
清原 洋一 国立教育政策研究所, 研究開発部, 教育課程調査官 (10353393)
奥野 健二 静岡大学, 理学部, 教授 (80293596)
三枝 新 独立行政法人放射線医学総合研究所, 放射線防護研究センター, 研究員 (40392229)
中武 貞文 鹿児島大学, 産学官連携推進機構, 准教授 (40404016)
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Keywords | 科学技術ガバナンス / STSアプローチ論 / シチズンシップ教育 / ESD論 / サイエンスコミュニケーション / リスクコミュニケーション / 放射線教育 / 原子力教育 |
Research Abstract |
本研究の本年度の研究内容である(1)文献調査では、第一に、科学技術ガバナンス論とその関連研究に関して、第二に、科学教育に関連するガバナンス教育論、STS教育・STSアプローチ論、シチズンシップ教育論、ESD論に関して、文献・資料の収集・分析を行った。科学技術ガバナンスの具体的な事例としては、日本の原子力行政においてかなりのインパクトを与えたものとして知られる、「原子力政策円卓会議」として行われた「コンセンサス会議」などが挙げられるので資料を集めた。一方、後者については、今日的なテーマである科学技術ガバナンスの観点から、これまで科学教育で理論的・実践的な研究の蓄積のあるSTS教育論を対象にして、再検討して、新しい方向性を見出す努力をおこなった。また、同様に、市民的な資質・能力の育成を目指したシチズンシップ教育論、ESD論との共通点および差異についても文献調査を行った。 (2)国際比較調査では、科学技術ガバナンスやそれに関連した活動、科学技術のガバナンス教育、STS教育、シチズンシップ教育、ESDなどが盛んに展開されているヨーロッパ諸国(オーストリア・フランス・ドイツ)を訪問して、実地調査を行った。現地では、科学技術ガバナンスの仕組み、各種コミュニケーション活動の内容構成、方法論、科学教育カリキュラムとの接続、科学教育カリキュラム・教材などの観点について、国内外の実態に詳しい大学等を訪問しインタビュー調査を行った。 (3)フィールド調査では、日本国内で開催されているサイエンスコミュニケーション、リスクコミュニケーション、科学技術ワークショップなどに参加し、参加者の問題意識や社会文化的な背景、学校歴、市民的資質・能力の実態などを調査した。また、全体会議は4回開催できた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
本研究が採択されてから、東日本大震災があり、「科学技術ガバナンスの形成のための科学教育論の構築」に関する基礎研究を推進することよりも先に、我々も含めて、日本全体が国難に向けて手探りの対策に追われている。本研究はこのような事態になる前に、対策を講じるための戦略を組み立てる筈であった。しかし、めまぐるしく変わる日本の本研究を取り巻く状況の変化が激しすぎ、また、海外の動きも週レベルで変化し、それらの情報を収集するだけでも膨大な時間を要してきたため。
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Strategy for Future Research Activity |
研究対象は,原子力発電所の事故と放射線汚染に対して、科学・技術コミュニティがどのような状況におかれ、そしてどのように展開してきたか、また、どのように社会に対して責任を果たそうと努力してきたか、さらに、国はどのような施策を打ち出し、展開してきたかも重要な研究対象となる。巨大な地震や津波に対する科学・技術(防災・減災科学やメカニズムの解明に関する科学・技術、発生予知に関する科学等)、に対しても同様の分析がなされる必要がある。 我が国の東日本大震災および原子力発電所の事故、放射線汚染に関しての諸外国の動き、とくに科学技術ガバナンスへの影響、科学技術教育政策への影響を調査する必要がある。特に平成24年度は研究代表者がフルブライト研究者として、3ヶ月間ほどアメリカで研究活動ができることになったので、本研究費も活用しながら、研究を展開する。さらに、教育学部と理学部、静岡県・静岡市と協力して、「静岡県における防災・減災と原子力」という講義を前期・後期展開できることになったので、受講する2百人程度の学生から、本研究課題に対応したデータも収集する予定である。また、鹿児島チームは継続して、一般市民からフィールド調査を展開し、放射線医学総合研究所のチームは放射線被爆に関して、より具体的な国際的・国内的なデータを元に、より科学的なデータに基づいた行動のあり方等について解明を試みる。 日本科学教育学会年会でセッションを開き、研究発表を行うと同時に、複数の論文をまとめ、中間報告書をまとめることが目標である。
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