2011 Fiscal Year Annual Research Report
ゲノム領域特異的ヒストンアセチルの誘導によるがん治療法の開発
Project/Area Number |
23300344
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Research Institution | Chiba Cancer Center (Research Institute) |
Principal Investigator |
永瀬 浩喜 千葉県がんセンター(研究所), 研究局, 研究所長 (90322073)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
渡部 隆義 千葉県がんセンター(研究所), 研究員 (60526060)
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Keywords | ピロールイミダゾールポリアミド / ヒストンアセチル化 / ヒストン脱アセチル化酵素阻害剤 / iPS細胞 / エピジェネティクス / SAHA / 山中因子 / 内在性遺伝子の再発現 |
Research Abstract |
エピジェネティックな修飾をゲノムの特定の領域に能動的に働かせることができる基礎技術を疾患エピミューテーションの修復技術および表現型と関連するエピミューテーションの探索技術として実用化することを目的として研究実施計画に取り組んでいる。初年度は、ペプチド合成機PSSM8を購入し、ポリアミド化合物の効率的な自動合成系を千葉県がんセンター研究局内に確立し、ポリアミド化合物の合成と合成化合物の生成に成功している。このポリアミド化合物とヒストン脱アセチル化酵素(HDAC)阻害剤の複合体を合成し、HDACの阻害活性が有ることを確認し、何らかの変化が細胞に誘導できるか?また、ゲノムのヒストンのアセチル化をある特異性を持ってゲノムの特定領域に促すことができるか?さらに、標的遺伝子の発現パターンを変えることが確認できるかを検討している。 標的遺伝子配列領域のDNAメチル化、ヒストンアセチル化およびヒストンH3K4とK27のトリメチル化の解析、遺伝子発現解析および標的外の領域での変化を検討することで、特異的に標的遺伝子を再発現させることができる方法の間接的理解を目指して、配列をランダムに選んで作成したポリアミドSAHA複合体ライブラリーによる、iPS細胞を誘導する山中因子、特にNanogの発現を誘導する化合物をヒト皮膚由来線維芽細胞でスクリーニングし、Nanogの候補化合物を京都大学との共同研究で得ることが出来た。さらにヒト皮膚由来線維芽細胞を多能性幹細胞様のアルカリフォスファターゼ陽性コロニーに変化させる表現型であることからがん幹細胞の誘導ができるかを検証している。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
初年度予定していた化合物の自動合成機の設置とその運用による化合物の合成と精製に成功している。また合成された化合物により、多能性幹細胞様のアルカリフォスファターゼ陽性の細胞コロニーを得ており、その細胞において山中因子の遺伝子領域のヒストンアセチル化の誘導と遺伝子発現が確認されている。がん細胞でのスクリーニングのための実験準備が完了している。自動合成機の調整に当初予定していた以上に時間が掛かってしまったため培養実験等の開始が当初の予定よりも遅れてしまっているが、ほぼ予定通りといえる。
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Strategy for Future Research Activity |
がん幹細胞は、がんの再発や難治性、薬剤耐性などに関与し、従前の治療に対する抵抗細胞として問題とされ、このがん幹細胞に対する治療法の開発が予後不良のがんを治療するために必要とされている。我々はヒト幹細胞様の細胞を繊維芽細胞より誘導することに成功しており、これをヒトがん細胞に応用し、ヒトがん幹細胞の誘導を試みる。同様にヒトがん幹細胞やがん細胞の細胞死を他の化合物で誘導できるかライブラリースクリーニングにより検討し、新規化合物の同定を試みる。また、がん細胞において内在性の野生型がん抑制遺伝子の再発現をポリアミドSAHA化合物で誘導することを試みる。
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