2011 Fiscal Year Annual Research Report
ピコプランクトンの単離と培養による揮発性有機ヨウ素化合物の新規生成源の探索
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23310010
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Research Institution | Nihon University |
Principal Investigator |
橋本 伸哉 日本大学, 文理学部, 教授 (10228413)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
谷 幸則 静岡県立大学, 環境科学研究所, 准教授 (10285190)
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Keywords | ピコ植物プランクトン / 揮発性有機ヨウ素化合物 |
Research Abstract |
ヨードメタンやジヨードメタンなどの揮発性有機ヨウ素化合物は、大気中ヨウ素の主な供給源であり、下部成層圏のオゾン分解や対流圏オゾンの濃度決定に関与し、さらに陸上に必須元素ヨウ素を運ぶ重要な化合物である。しかし、既知の生成起源では海洋から大気への揮発性有機ヨウ素化合物のフラックスのほとんどが説明できず、海洋での生成機構もよくわかっていない。本研究の目的は、これまでに外洋において生物量が多いにもかかわらず研究例が乏しいピコプランクトン(0.2~2μm)に着目し、ピコプランクトンの単離および培養を通じて揮発性有機ヨウ素化合物の新規の生成起源を明らかにすることである。 平成23年度に実施した研究の成果は、次の2点である。1:ピコプランクトンの単離法の最適化。自動細胞解析分離装置を用いて、通常の顕微鏡下でのピペット単離法では単離培養が困難なピコサイズのプランクトンを海水試料や粗培養試料から単離するための測定パラメータの最適化を行った。2:ジヨードメタンを含む揮発性有機ヨウ素化合物の生成生物種の探索。自動細胞解析分離装置による単離法の最適化と並行して行ったフィールド調査から、ジヨードメタンを含む揮発性有機ヨウ素化合物濃度が高い沿岸試料を見いだし、5μm以下の微生物群集によってジヨードメタン等が生成される事を見いだした。 温帯域や熱帯域に生息する微生物による揮発性有機ヨウ素化合物生成の報告はほとんどなく、今後ジヨードメタンを生成する5Fm以下の微生物が単離・同定されると、本研究が世界に先駆けて大気中ヨウ素の主な供給源に関するデータを提供すると期待される。また、今回実験に用いる自動細胞解析分離装置によるピコプランクトンの細胞分離と培養手法は、抗生物質などの生理活性物質を生成するピコプランクトンの探索にも応用することが可能であり、未開拓な生物群の生物資源としての活用に必要な基礎データを提供することも期待される。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
平成23年度の研究実施計画は、1:ピコプランクトンの単離法の最適化および、2:ジヨードメタンを含む揮発性有機ヨウ素化合物の生成生物種の探索の2点である。平成23年度の実験結果から、1:装置の実験条件の最適化と、2:生成生物種の探索実験ともに成果が出ていて、初期の目的を達成しているため。
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Strategy for Future Research Activity |
平成23年度にフローサイトメーターが日本大学文理学部化学科に設置され、フローサイトメーターによるピコプランクトンの分析・分取条件の最適化を行った。またフィールド調査から、ジヨードメタンを含む揮発性有機ヨウ素化合物の濃度が高い沿岸試料を見いだし、5μm以下のピコプランクトンを含む微生物群集によってジヨードメタン等が生成される事を見いだした。平成24年度以降は、この5μm以下の生物群集をフローサイトメーターにより分離して、ジヨードメタンを含む揮発性有機ヨウ素化合物を生成する生物の探索・同定を行い、また微生物生態系におけるハロカーボン生成への培養条件の影響についても調べていく予定である。
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Research Products
(4 results)