2012 Fiscal Year Annual Research Report
高リスク大気中六価クロムの極微量分析技術の高度化・評価活用と発生源・発生機構解明
Project/Area Number |
23310021
|
Research Institution | Yokohama National University |
Principal Investigator |
小林 剛 横浜国立大学, 環境情報研究院, 准教授 (60293172)
|
Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
久保 隆 長崎大学, 産学官連携戦略本部, 助教 (40397089)
三宅 祐一 静岡県立大学, 環境科学研究所, 助教 (40425731)
|
Project Period (FY) |
2011-04-01 – 2014-03-31
|
Keywords | 大気中六価クロム / 大気汚染 / リスク評価 / 有害大気汚染物質 / 微量分析技術 / 浮遊粒子状物質 |
Research Abstract |
平成24年度は、前年度に引き続き以下のような「一般大気環境濃度レベルと環境中動態の把握、主要発生源や健康リスクレベルを明らかにするための研究」を行った。 1.前年度に引き続き国内3地域(関東(神奈川)、東海(静岡)および九州(長崎))の一般環境濃度レベルの測定を行った。横浜では0.06~0.07ng/m3程度と長崎や静岡より濃度がやや低く、前年度までと比べて低減傾向にあると考えられた。排出源近傍の堆積粉塵等の測定を行い、幹線道路の交差点やめっき工場周辺でやや高濃度となる傾向が示唆された。 2.主要発生源の探索のために、PRTR情報により把握した国内の主要発生源からの六価クロムの排出実態の調査を開始した。主要な排出源からの排出量情報を用いて、産総研のMETI-LISモデルやADMERモデルにより大気の濃度分布を算出し、各排出源の大気濃度への寄与について考察した。路盤塗料(黄色線)の寄与が比較的大きくなる推算結果となり、幹線道路近傍での捕集・測定を行うなど、より詳細な調査が必要であることが分かった。 3.地域別・季節別・粒径別に六価クロム濃度等の情報を整理し、人への健康リスクの詳細評価のための準備を行った。1と2で得た各地域の各季節の実測・予測濃度から10万人に1人の生涯発がんリスクレベルには達しないが、その10分の1以内という要懸念なリスクレベルにあり、発生源周辺での詳細な調査が求められることが示唆された。また、粒径別の肺への沈着率、肺ガンのユニットリスク等の情報を収集・整理した。横浜では、六価クロムは粒径2.5μm以下のPM2.5に多く分布し、比較的高濃度となるときは、PM2.5中の濃度が高くなっていることが示唆された。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
予定どおりに、国内3地域(神奈川、静岡、長崎)の一般環境濃度レベルの測定と、排出源情報に関する調査やシミュレーション予測を実施することができ、人への健康リスクの詳細評価のための準備を行うことができた。また、平成25年度の研究を行うための課題も整理でき、関連情報も収集することができたため。
|
Strategy for Future Research Activity |
平成25年度は、前年度に引き続き以下のように研究を行う。 1.「一般大気環境濃度レベル・広域分布と環境中動態の把握と分析技術の高度化研究」として、(1)前年度に引き続き関東地域、東海地域および九州地域等の一般環境濃度レベルの測定を行う。(2)排出源近傍地域のリスク評価のため主要排出源と想定される地点周辺の堆積粉塵等の測定を行う。調査は、これまでと同様に既に協力関係にある研究協力者の協力を得ながら実施する。(3)引き続き大気捕集-前処理-定量の各操作の最適化・高感度化を検討し、とりまとめる。 2.「主要発生源の探索と国内排出源による環境負荷の推計、大気中酸化還元挙動の把握」として、引き続き(1)PRTR情報により把握した国内の主要発生源における六価クロムの排出実態の調査を行う。PRTR情報等と測定結果を活用して、国内の六価クロムの主要な排出源からの環境負荷を推計する。(2)産総研のMETI-LISモデルを用いた発生源近傍での濃度分布、産総研のADMERモデルを用いた広域大気の濃度分布を、季節別、粒径分布別など解析する。(3)発生源を特定するため、六価クロム以外の重金属類についても引き続き分析し、発生源周辺大気や堆積粉塵等の金属組成との関係を解析する。(4)大気中のオキシダントや有機物との酸化還元反応による三価/六価クロムの形態変化の影響を明らかにするため、大気中での反応機構について検討する。 3.「地域別・季節別・粒径別六価クロム濃度の整理と人への吸入リスク詳細評価研究」として、大気中六価クロムの人への健康リスクについて詳細評価を行う。引き続き1と2で得た各地域の各季節の実測・予測濃度と粒径別の肺への沈着率、肺ガンのユニットリスク等の情報を用いて、詳細なリスク評価を行う。
|