2012 Fiscal Year Annual Research Report
ナノバイオミメティックプロセスによる小規模フッ素排水処理・資源循環パッケージ開発
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23310058
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Research Institution | National Institute of Technology, Toyama College |
Principal Investigator |
袋布 昌幹 富山高等専門学校, 専攻科, 准教授 (50270244)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
宮重 徹也 富山高等専門学校, 専攻科, 准教授 (70332012)
斧田 宏明 京都府立大学, 生命環境科学研究科(系), 講師 (80360246)
間中 淳 富山高等専門学校, 専攻科, 助教 (90413757)
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Project Period (FY) |
2011-04-01 – 2014-03-31
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Keywords | 排水処理 / フッ素化合物 / リン酸カルシウム / ミニマムエミッション / 小規模事業所 |
Research Abstract |
研究2年目となる平成24年度は以下の内容で研究を行った。 1)フッ素排水の高度処理に適した機能性材料の設計,未利用資源からの製造技術:実際の水処理現場との情報交換で見いだされた「スラッジの分離回収」の課題を克服するため,排水中フッ素化合物の処理を可能とするリン酸カルシウムの粒子形状を制御するための条件を構築,論文発表を行った。また,未利用資源である貝殻等を用いてリン酸カルシウムを製造する基礎知見を構築,論文発表を行った。また,リン酸カルシウムのフッ化物イオンとの反応性を向上させる,粒子表面の改良技術を確立した。 2)処理効率を現場で簡便に評価できるオンサイトモニタリング技術:排水および処理水中のフッ化物イオン濃度を簡便に評価できる手法として,種々の濃度の妨害イオンを用いてフッ化物イオンをマスキングし,ある値以上で急激に発色反応を引き起こすことができる手法を開発,論文発表を行った。 3)処理後に生じる副生物(スラッジ)の再資源化:スラッジの再資源化について,アパタイトが有する触媒能を活かした触媒等への展開の可能性を検討した。 4)アウトリーチ・ビジネスシナリオ構築:水処理業界との意見交換の中で,フッ素およびホウ素は海域への放流が可能な地域や,フッ素等を含まない排水処理ラインを併設している小規模事業所では,適切に処理水を混合希釈することで高度処理を行うに値するビジネス的な価値が見いだせないことが指摘された。一方,水の使用が限られる地域,土壌汚染のリスクが懸念される地域等においては,この種の技術の有用性があることが見いだされている。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
1)リン酸カルシウムの合成については今年度,材料科学の分野においても興味ある基礎的学術成果が得られている。水処理への適応についても,各種業界とのディスカッションを通して,フッ素排水の高度処理への展開可能性を確固とすることができた。また,リン酸カルシウムの反応性を向上できる技術の確立も成し遂げることができた。 2)フッ素濃度のオンサイト分析については,分担者の間中(富山高専)が「分析化学」誌への総合論文掲載等の成果を挙げており,基礎学術的にも高い評価を受けた。実用的には試験紙・テストキットへの展開が今後の課題と言える。 3)実用化への展開については,残念ながら当初の目的である小規模事業所へダイレクトに本成果を展開できるビジネス的な価値が薄いことが明らかになってきたが,水処理に伴う環境影響低減について,いくつかの知見が見いだされていることから,これらを総合的に組み合わせることにより,次年度以降に新しい環境影響の低いフッ素排水処理技術への展開が可能となると期待される。
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Strategy for Future Research Activity |
1)リン酸カルシウムの合成については,未利用資源からの合成,粒子形状制御の基礎的検討に加え,水処理の作業効率の向上等,実際の水処理に適した検討を実排水を用いた検討などを通して検討する。 2)オンサイト分析については今年度である程度の成果が得られた。実際に企業等との連携により,分析キットの開発につなげることが次年度の課題。 3)実用化への展開については,今年行われる暫定基準の見直しでめっき業界については現在の基準を3年間延長することとなったことから,他の業界も含めて小規模事業所への展開可能性を検討する。また,水処理に伴って発生するスラッジのハンドリング等の課題も指摘されていることから,これらの対策を最終年度となる次年度は積極的に進め,新しい水処理技術の構築につなげたい。
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