2012 Fiscal Year Annual Research Report
バイオリファイナリーのための植物細胞壁全可溶化・バイオミメティック分解系の構築
Project/Area Number |
23310061
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Research Institution | Kyoto University |
Principal Investigator |
渡邊 隆司 京都大学, 生存圏研究所, 教授 (80201200)
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Project Period (FY) |
2011-04-01 – 2014-03-31
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Keywords | バイオマス / バイオリファイナリー / リグニン |
Research Abstract |
化石原料の枯渇や大気中のCO2濃度の急激な上昇を背景として、石油リファイナリーから、セルロース系バイオリファイナリーへの変革が世界的に希求されている。ポスト石油リファイナリーでは、化学産業にとって重要な芳香族物質をつくる技術開発が必須である。本研究では、木材をまるごと安価な電解質溶媒に可溶化する技術と、リグニンのバイオミメティック分解反応を融合し、木質バイオマスの全成分を有効利用する成分分離・変換法を開発し、多糖と芳香族資源であるリグニンの有用化学品への変換を同時に達成する。このため、各種反応を木材の全可溶化物に適用する。従来、強固な構造をもつ木材の固液反応には限界があった。本提案は、木材そのものを常温で安価な溶媒への溶解させる技術を最大限活かし、コスト面でも魅力であるシンプルな反応系を適用して、芳香族や脂肪族化学品、バイオエタノール生産を含む高効率バイオマス成分分離・変換系を構築する。これまでに、ヘテロポリ酸により、微粉砕木粉を全可溶化することに成功した。可溶化した溶液を加熱することにより、バニリンやシリンガアルデヒド、ジメトキシベンゼンなどのリグニンモノマーが生成した。ヘテロポリ酸が溶解と分解触媒の二つの機能をもつことを示したことは、シンプルな反応系を構築する上で意義深い。ヘテロポリ酸とは別に、有機酸やアルデヒドにより木材が全可溶化する溶媒系を複数を見出した。また、この溶解物からセルロースとリグニンを分離する様々な方法を考案した。見出した溶解系で、非フェノール性リグニン二量体モデルの1-(3,4-Dimethoxyphenyl)-2-(2-methoxyphenoxy)-1,3-Propanediol(GOG-Me)の分解反応も実施し、分解物を同定した。木材の成分分離・変換法として、さらに検討を加え、糖およびリグニンの有用物質への変換効率を評価する予定である。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
新規な木材全可溶化物を複数見出し、分解物の構造解析、モデル化合物の分解物の同定を行ったことから、研究は順調に推移していると判断する。微粉砕することなく、木粉を直接可溶化することにも成功したことは大きな進展である。今後、高効率な成分分離法の開発を継続するとともに、セルロース画分の糖化・発酵性も評価する。
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Strategy for Future Research Activity |
木材を全可溶化する方法について、新しい知見を蓄積した。これをベースに、可溶化条件を最適化するとともに、成分分離法を利用した有用物質への変換法を確立する。これまでの研究体制に加えて、新入の修士1回生の分担も加えて、新しい木材変換法を確立する。
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