2011 Fiscal Year Annual Research Report
単一粒子分光・時間分解分光による金ナノ粒子のパルスレーザー誘起形態変化の直接観測
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23310065
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Research Institution | The University of Tokushima |
Principal Investigator |
橋本 修一 徳島大学, 大学院・ソシオテクノサイエンス研究部, 教授 (70208445)
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Keywords | 金ナノ粒子 / 単一粒子分光 / 散乱スペクトル / レーザー誘起形態変化 / 時間分解分光 |
Research Abstract |
第一に、フェムト秒レーザー照射による時間分解分光計測をおこなった。直径60nmの金ナノ粒子分散液に波長800nm,150fsのレーザーパルスをレーザー強度を変化させながら照射した。金ナノ粒子のレーザー加熱により、プラズモンバンドの幅広化による過渡的ブリーチが起こることは既に知られている。この過渡的ブリーチは等吸収点を持つことから、この波長でモニターすることにより、スペクトルの温度変化の影響を受けることなく、サイズ減少によるプラズモンバンドの過渡的減少を観測できると考えて、実験した。その結果、波長490nmにおいて、レーザー強度に依存した、プラズモンバンドのブリーチを観測した。この信号は約20-100psの時間範囲で観測され、この時間範囲で金ナノ粒子の分裂がおこると考えられる。分裂のためのしきいレーザーエネルギーは7mJ/cm2であり、レーザー強度に依存した金粒子温度のシミュレーションによれば、このレーザー強度では金は融点には達するが、沸点よりはるかに低い。このため、光熱過程による金の蒸発は考えにくい。この場合、クーロン爆発のしきい値は超えており、クーロン爆発を観測したと考えるのが妥当である。 第二に、金ナノ粒子水溶液を高圧下に置き、そこでのレーザー照射による形態変化およびサイズ減少を見ることが課題である。常圧の水溶液中では、レーザー加熱された金粒子からの熱移動により、媒体である水の加熱が起こる。これが著しいい場合、superheating状態になり、300℃あたりで爆発的蒸発が起こり、金ナノ粒子周囲にバブルが発生するというのが最近の通説である。このバブルの影響を調べるためには、加圧状態にしてバブル発生を抑えて実験するのが1つの手法である。そこで、加圧下でレーザー照射と分光測定ができる装置を開発し、これを使った実験を開始した。臨界圧である22.1MPa以上に加圧することにより、周囲の水の温度が臨界温度647Kを超える場合、バブルはもはや発生することができず、その代わりに超臨界状態になる。超臨界状態の金ナノ粒子への影響としては、バブルに比べて熱移動効率が高くなり、冷却効率がよくなると考えられる点である。我々は、高圧印加によって金ナノ粒子の形態変化がむしろ抑えられる傾向を観測した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
時間分解分光計測による金ナノ粒子のサイズ減少を直接捉える実験に関してはほぼ予想通りの結果を得ることができた。ただし、当初予想しなかった、媒体の加熱による屈折率低下の効果を見積もる必要が出てきた。 また、高圧実験に関しても、装置闘発および実験が進展しデータが出つつある。レーザー照射しながら溶液攪拌の必要が出てきたため、装置の改良を行う。 単一粒子分光による金ナノ粒子のアブレーションの研究に関してもデータが出つつある情況である。
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Strategy for Future Research Activity |
単一粒子分光実験および加圧でのアブレーション実験の更なる進展を図る。同時に、計算によるシミュレーションを更に発展させ、金ナノ粒子の温度上昇による周囲媒体屈折率変化による吸収スペクトルおよび散乱スペクトル変化を予測できるようにし、実験データの解釈を進展させる必要がある。
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Research Products
(4 results)