2011 Fiscal Year Annual Research Report
新しい分子イメージング技術の開発に向けたルシフェリン生合成系の解明
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23310159
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Research Institution | Nagoya University |
Principal Investigator |
大場 裕一 名古屋大学, 生命農学研究科, 助教 (40332704)
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Keywords | ルシフェリン / 生合成 / 分子イメージング / ホタル / セレンテラジン |
Research Abstract |
イメージング技術に広く利用されているルシフェリンについてその生合成プロセスの解明をめざす過程で、まず実験材料に用いるヘイケボタル(Luciola lateralis)の通年飼育を目的とした餌の飼育増殖を試みそれに成功した。ヘイケボタルの幼虫は自然界において軟体動物類を主とするさまざまな動物を餌としているが、より飼育と増殖が容易でヘイケボタルの幼虫がよく食べるエサを見つけ出しそれを増殖させる技術を確立することがこの研究課題の重要な第一歩となる。本年度は、サカマキガイ(Physa acuta)を水槽で飼育したところ、非常に効率よく繁殖した。水温をサーモスタットを使って高めに保つとより繁殖が早かった。エサは、当初は熱帯魚(プレコ)用のものを与えたが、のちにアワビ養殖用のエサ(アワビ2号)を与えた方が安価でよいことが分かった。これによりヘイケボタル幼虫のエサの供給方法が確立した。しかし、ホタルの通年飼育には期間がかかるためそれが達成されたかどうかの検討まではできなかった(これについては、平成24年7月末までに完了した)。 ホタルルシフェリンは、ヒドロキノン(もしくはベンゾキノン)とシステインから生合成されると考えられてきたが、ヒドロキノンやベンゾキノンは毒性(があるため、それがホタルの体内に存在するのかどうかをまず検討する必要があった。これについてヘイケボタル成虫を用いて含有量を測定したところ、ヒドロキノンもベンゾキノンも検出限界以下であり、ホタルが保有するルシフェリン量と比較すると基本的に存在していないと考えられた。したがって、ホタルルシフェリンはヒドロキノンもしくはベンゾキノンから生合成されていないか、あるいはヒドロキノンやベンゾキノンが誘導体の形で生体内に蓄積されている可能性が示唆された。このことは、ホタルルシフェリンの生合成を解明してゆく上で重要な知見のひとつと考えている。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
実験材料となるヘイケボタルの通年飼育をめざして、まずは幼虫のエサとなる貝類の飼育条件の検討を行う計画であったが、サカマキガイを用いた方法を確立することができた。サカマキガイをエサとする方法がベストであるかどうかは長期飼育の結果を待たなければならないが、現時点では当初計画を達成している。また、生合成メカニズムの解明の準備をスタートする計画については、ベンゾキノンあるいはヒドロキノンのホタル体内における存在を検討し、それが基本的に存在しないということがわかり、今後の方針について再検討する必要があることが明らかとなった。
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Strategy for Future Research Activity |
ヘイケボタルの飼育系を確立し、安定同位体標識体の取り込み実験を開始する。成虫の時期を変えて実験をする、あるいはさなぎを使って実験をするなどの工夫が必要。
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Research Products
(6 results)