2012 Fiscal Year Annual Research Report
ベトナム教育改革の質的向上を支える授業研究ー日越地域間共同ー
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23310184
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Research Institution | University of the Ryukyus |
Principal Investigator |
村上 呂里 琉球大学, 教育学部, 教授 (40219910)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
那須 泉 琉球大学, 法文学部, その他 (20381204)
善元 幸夫 琉球大学, 教育学部, その他 (40587739)
西岡 尚也 大阪商業大学, 公私立大学の部局等, 教授 (60336360)
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Project Period (FY) |
2011-04-01 – 2016-03-31
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Keywords | ベトナム教育改革 / 少数民族 / 自尊感情 / 子ども中心主義 / 教員養成カリキュラム / 子ども理解 / 共同授業研究 |
Research Abstract |
今年度は、2回に及ぶタイグェン師範大学における集中講義およびワークショップを核に据え、共同研究を進めた。 主題は、「子どもたちの自尊感情を育てるための授業づくり~子ども中心主義とは何か~」である。 (第1回)9月18日~20日(タイグェン師範大学およびトゥーヌオン小学校にて)以下の内容で実施した。①岩木桃子によるアイスブレイキング、②子ども中心主義を掲げて実践を積み重ねてきた善元幸夫による集中講義「「日本における子ども中心主義の歴史と実践~自らの小学校教師体験をもとに~」、③那須泉・村上呂里による新宿区立大久保小学校日本語国際学級のドキュメントの視聴およびそれを学習材としたワークショップ(KJ法による)、④沖縄とアイヌ民族の創作民話を学習材とし、自らの教育体験を振り返るワークショップ、⑤「子ども理解を出発点とする授業づくり」をテーマに、少数民族地域にあるトゥーヌオン小学校における観察実習(少数民族学生を含む学生6名)、⑥地理学者・西岡尚也による国際理解教育の講義。 (第2回)12月14日(トゥーヌオン小学校にて)①9月に観察実習をした学生による研究授業を行い、その後授業研究会を持った。②民族楽器演奏者コウサカワタルによるモン族の楽器を学習材としたワークショップ「楽器の来た道、音楽の行く道」を実施した。 学習者中心主義に立つ学びを実際に体験してもらう→その体験をもとにベトナム人学生自身が子ども理解を踏まえた研究授業を行い、授業研究会を持つという一連の流れを実施した。これらの提起に対し、タイグェン師範大学クヮン学長は、少数民族地域の困難を学ぶために教員養成カリキュラムにおいて教育実習が重要であることを認識し、教員養成カリキュラムに位置づけると語った。また日本側研究者も、少数民族出身学生の作文を通して、その教育体験と深い思いに触れることができた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
子ども中心主義に立つ学びの内実を豊かにしていくためには、授業方法を伝えるだけではなく、マイノリティの子どもたちの思いを深く理解し、その尊厳を学ぶことを核に据えなければならない。今年度は、ベトナムの教員養成カリキュラムに実際に参加し、将来少数民族地域の小学校教師になる学生を対象に集中講義とワークショップを行った。実際に学習者中心主義に立つ学びを体験してもらったり、「子ども理解を出発点に授業をつくる」を主題とし、少数民族地域の小学校における観察実習を踏まえて学生自身が授業づくりと研究授業を行ったことは、大きな成果である。 日本側研究者も、ベトナムの少数民族の中でもより差別的な位置に置かれたモン族の学生が自らの学校体験を綴った作文を読み、深い感銘を受けた。これまで見えてこなかった少数民族出身の教育体験に触れ、今後モン族に焦点を当てた研究を進める意義を再認識した。本研究を、表層ではなく、ベトナム教育の現実、とりわけ困難を多く抱えた少数民族地域の現実に根ざして進めていく土台を築くことができた。
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Strategy for Future Research Activity |
①2012年度は、実際に、将来少数民族地域の小学校教師になる学生を対象に集中講義とワークショップを行った。その成果と意義は、参加したごく少数のベトナム人研究者や学生にしか十分に伝わっていない。このワークショップで綴られたモン族出身学生の心の痛みも多数民族キン族出身の教員や学生には十分に伝わっていない。本研究を進めるには、ベトナム側に広く本研究の取り組みを伝える必要があることを痛感した。したがって、2013年度の前半は、これまでの研究の歩みを日本語・ベトナム語の双方でまとめ、ベトナム語でベトナム側に伝えることに重きを置きたい。それを最優先課題とする。 ②ベトナム教育改革の動向については、資料収集の途中である。さらに資料を収集し、論文にまとめる。 ③2012年度の成果を継続させるために、モン族出身学生、タイー族学生出身学生を沖縄に招聘し、僻地の小学校を訪問し、学びを実際に見てもらう。またその小学校で、モン族の民族楽器と沖縄の民族楽器のセッションを中心としたワークショップを行いたい。
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Research Products
(1 results)