2013 Fiscal Year Annual Research Report
ベトナム教育改革の質的向上を支える授業研究ー日越地域間共同ー
Project/Area Number |
23310184
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Research Institution | University of the Ryukyus |
Principal Investigator |
村上 呂里 琉球大学, 教育学部, 教授 (40219910)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
那須 泉 琉球大学, 法文学部, その他 (20381204)
善元 幸夫 琉球大学, 教育学部, その他 (40587739)
西岡 尚也 大阪商業大学, 公私立大学の部局等, 教授 (60336360)
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Project Period (FY) |
2011-04-01 – 2016-03-31
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Keywords | ベトナム / 教育格差 / 学力格差 / 少数民族 / 沖縄 / 授業研究 / 地域 |
Research Abstract |
本研究は、これまでに共同研究の成果と課題を日越二カ国語で明らかにする報告書を作成した。その内容は以下の通りである。ベトナムでは、lay hoc sinh lam trung tam (学習者中心主義)をキーワードとして教育改革が進められている。一方日本では、「子ども中心主義」による教育改革を経て、今日、「子ども中心主義」は「格差」の固定化やさらなる拡大を招くという論調が興っている(小玉重夫『学力幻想』(ちくま新書、2013年)など)。こうした論調は、「教育格差・学力格差をこえる」ために、学習事項の確かな達成の可視化(「確かな学力」の保障)を唱え、その基礎をもとに自らの〈声〉を社会的メッセージへと転化する市民的力量の育成を唱えている。マイノリティや「弱者」に位置づけられた側の〈声〉が社会的メッセージとして公共圏で位置づけられることを通して、「少数者」「多数者」あるいは「弱者」「強者」という関係性自体を組み換えることが可能となるという議論である。 こうした議論に対し、本研究はつぎのような論点を提起した。 ○マイノリティの子どもたちが、自らの尊厳が尊重されていると実感できる関係性を育み、その〈声〉を安心して表現でき、その〈声〉を聴き合い、相互理解を深めてこそ、自己や他者を尊重する姿勢や学ぶ意欲は生まれる。こうした関係性を、教室や学校でつくりだすことこそが、教育格差、学力格差をこえる根幹である。 ○そのために、マイノリティに位置づけられた側の〈声〉を社会的なメッセージへと転化する方法論の開発が必要である。 ○その〈声〉を聴き、対話する場や道筋を、教員養成カリキュラムにおいて正式に位置づけることが求められる。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
今年度は、共同研究の歩みを記録し、成果と課題を日本語とベトナム語で報告する書の原稿完成に力を注いだ。未だ論文化には至っていないが、まずは正確に歩みを記録し、成果と課題を日本とベトナム語で共有することこそ重要と考えたからである。この原稿がひとまず完成し、成果と課題を明らかにできた点において、おおむね順調に進展しているととらえる。来年度には公刊する道を模索するとともに、論文化に努めたい。これに基づくベトナム側研究者との討議もこれからの課題である。
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Strategy for Future Research Activity |
①今後は、まず何よりも作成した日本語ベトナム語2カ国語の共同研究の歩みを、日本とベトナムの双方で公刊することを最優先して取り組む。 ②グローバル時代の教育格差、学力格差を克服するために、今後とも沖縄の離島僻地の小学校との共同授業研究と連動させ、そこで得た知見を相互交流する場をつくる。 ③マイノリティに位置づけられた側の〈声〉を社会的なメッセージへと転化する方法論の開発について、ベトナム側研究者、日本側研究者で討議していく。 ④ベトナムで「学びの共同体」論を実践している研究者との交流を薦め、グローバル化時代の教育格差、学力格差を克服する論点をさらに深める。
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Research Products
(2 results)