2012 Fiscal Year Annual Research Report
世界における終末期の意思決定に関する原理・法・文献の批判的研究とガイドライン作成
Project/Area Number |
23320001
|
Research Institution | University of Toyama |
Principal Investigator |
盛永 審一郎 富山大学, 大学院医学薬学研究部(薬学), 教授 (30099767)
|
Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
加藤 尚武 人間総合科学大学, 人間科学部, 客員教授 (10011305)
浅見 昇吾 上智大学, 外国語学部, 教授 (10384158)
秋葉 悦子 富山大学, 経済学部, 教授 (20262488)
松田 純 静岡大学, 人文社会科学部, 教授 (30125679)
小出 泰士 芝浦工業大学, 工学部, 教授 (30407225)
久保田 顕二 小樽商科大学, 商学部, 教授 (50261392)
藏田 伸雄 北海道大学, 文学研究科, 教授 (50303714)
小林 真紀 愛知大学, 法学部, 准教授 (60350930)
本田 まり(眞鍋まり) 芝浦工業大学, 工学部, 准教授 (60384161)
忽那 敬三 千葉大学, 普遍教育センター, 教授 (70192028)
香川 知晶 山梨大学, 医学工学総合研究部, 教授 (70224342)
甲斐 克則 早稲田大学, 法学学術院, 教授 (80233641)
児玉 聡 京都大学, 文学研究科, 准教授 (80372366)
品川 哲彦 関西大学, 文学部, 教授 (90226134)
|
Project Period (FY) |
2011-11-18 – 2014-03-31
|
Keywords | 安楽死法 / 信頼性 / 透明性 / 高福祉 / 同意原則 / 滑り坂仮説 / 緩和ケア |
Research Abstract |
24年度は研究者の共同としては、研究会を4月、6月そして12月に京都生命倫理研究会と共催で開いた。またこのほかに、10月27日に立命館大学で開催された日本生命倫理学会第24回年次大会でシンポジウムを開催した。25年3月にドイツのVollmann教授の講演会。25年2月末に『生命倫理研究資料集VII』を発行し、10月のシンポジウムの内容および関連資料を掲載。 安楽死法の成立のための4条件を取り出すことができた。「信頼性」、「透明性」、「同意原則(自律性)」、「高福祉」である。ただし、問題点が二つある。一つは、判断能力の問題。この問題はドイツの精神科医が指摘している。「すぐに死ぬことを望んでいる身体的に重症の患者の多数は、耐え難い苦痛やそのほかの身体的要因からこのことをするのではなくて、むしろ心的・社会的要因が特に抑鬱性の錯乱の存在が重要な役割を演じている。………したがって患者の自己決定権による積極的死の援助を倫理的に合法と認めることは実際上疑わしい」。もう一つはなぜ「滑り坂仮説」が消えないのかである。それは、オランダでは通常の医療とされる治療の中止・緩和医療が医師の判断で行われているということにあるのではないか。このほか比較としてドイツ・フランス・イギリスの情報を集めた。イギリスでは、栄養/水分補給は法律上治療と見なされ、そのほかの医的侵襲と同様に扱われるべきもので、基本的ケアではない。植物状態患者(最小意識状態にあるものも含む)には、人工的な栄養/水分補給は中止されうる治療である.胃瘻造設術も。身体の統一性への干渉。憲法上の生命権とは、成り行きに任される権利、自然で尊厳を持って死ぬ権利、人工的な栄養/水分補給によって人工的に延命されない権利である。オーストリアも同じ。フランスは議論中などがわかった。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
全体としては80%終了したといえる。 ①ベネルクス3国の安楽死法の内容と運用の比較研究。これは90%終了した。日本生命倫理学会でシンポジウムを企画し、発表した。日本生命倫理学会ニューズレターNo.52に報告を掲載した。さらに「生命倫理研究資料集VII」にその成果を掲載した。また個人的にそれぞれ研究誌に発表したし、発表予定。(私に関しては、理想691号(秋9月刊に掲載予定)。②生命倫理研究資料集VIを予定通り刊行し、3月に開催された『ベネルクス3国の安楽死法の比較』シンポジウムの報告ならびに関連資料(特に本邦初訳のベルギー・ルクセンブルクの安楽死法を掲載した。VIII予算はやりくりで捻出した。③10月末の日本倫理学会でシンポジウムを企画し、ベネルクス3国の安楽死法の比較を行った。(計画にはなかったが、25年2月末に『生命倫理研究資料集VII』を刊行し、それに基づく成果を掲載した。④研究会を開催し、ベネルクス以外の、アメリカ・イギリス・ドイツ・フランス等のPAS(医師による自殺ほう助)の問題の検討を開始した。⑤ドイツからEser名誉教授を招いてシンポジウムを東京・京都で開催した。また、ドイツのVollmann教授の講演会を京都で企画した。ドイツの今日の状況について把握した。 やり残した問題は、日本国内の調査である。これについては、今だ手をつけていない。現在国会で議員立法として、審議中であり、各種機関が調査を行っているので、それらの調査結果を利用することを考えている。
|
Strategy for Future Research Activity |
①終末期患者の同意能力について。オランダでは9000人の患者が安楽死を要請している。ドイツの精神科の調査では「1995年にオランダで安楽死された、およそ3200人の患者のうちおよそ320人の患者は自己決定能力が疑わしいと基礎づけられた」。②すべり坂仮説が消えないのはなぜか?オランダの調査や資料の解読を続ける。③イギリス・アメリカ・ドイツ・フランス等における、PASについて。特に、水分栄養補給の取り外しの問題。④日本国内の医療機関等の調査。⑤ガイドライン作成の基準案作り行う。⑥日本生命倫理学会等でシンポジウムを計画し、その成果を発表し、広く批判を仰ぐ。⑦『生命倫理研究資料集VIII』を2014年3月に刊行し、成果を発表する。⑧雑誌『理想』692号(2014年3月刊)に特集「終末の医学的決定――死の質の良さの探求――」を組み掲載を予定している。
|
Research Products
(49 results)