2011 Fiscal Year Annual Research Report
戦争・災害より見た近代東アジア民衆諸宗教に関する比較史的研究
Project/Area Number |
23320017
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Research Institution | Gakushuin University |
Principal Investigator |
武内 房司 学習院大学, 文学部, 教授 (30179618)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
今井 昭夫 東京外国語大学, その他部局等, 教授 (20203284)
孫 江 静岡文化芸術大学, 人文・社会学部, 教授 (40329529)
胎中 千鶴 目白大学, 外国語学部, 教授 (30550818)
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Keywords | 国際情報交換(ベトナム) / 民衆宗教 |
Research Abstract |
本年度は,以下の通りである。 (1)海外資料調査:分担研究者の孫江は南京市檔案館・上海市図書館等で民衆宗教関係資料の調査を行ったほか,連携研究者の牧野元紀はフランスのパリ外国宣教会図書館において中国・ヴェトナム等の東アジア地域で各種救済活動を展開したカトリック慈善団体「聖嬰会」の刊行した雑誌資料の調査にあたった。また,研究協力者の張士陽は台湾中央研究院台湾史研究所において台湾民衆宗教に関して,同じく小武海櫻子は,中国・重慶市図書館において慈善活動を展開したことで知られる同善社関係資料について,倉田明子は香港大学・香港科技大学を中心にミッション関係資料に現れる中国民衆宗教関係資料の調査にあたった。 (2)海外フィールド調査:2012年3月2日より8日まで,ホーチミン市やミト市,ヴィンロン市等ヴェトナム南部各地に点在し,各種慈善活動を展開している中国系民衆宗教団体に対するパイロット調査を実施した。この調査をつうじて,ヴェトナムにおいて2008年より政府の公認を受けた「明師道仏教会」が中国近代の民衆宗教「先天道」の流れを汲むものであることを確認するとともに,蔵霞洞をはじめとする「明師道」系民衆宗教の慈善活動についても多くの知見を得ることができた。さらに,2013年3月2日より8日まで,2012年度のパイロット調査を踏まえ,明師道系仏教施設「仏堂」に残されている宗教文献の調査にあたり,多くの経巻類の存在を確認するとともにその多くをデジタルカメラにて撮影・記録することができた。この調査にあたっては,ホーチミン市人類学・民族学協会の協力を得た。こうした民衆宗教の淵源をなす中国大陸においてはそのほとんどが失われており,今回の調査で得られた知見は極めて貴重なものといえる。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
宗教社会史の研究には現地フィールド調査が重要であるが,ヴェトナムの仏教系宗教団体の一つ「明師道仏教会」は2008年に公認されたばかりなこともあって,外国研究者に対しても寛容であり,比較的円滑にその歴史や教義に対する聞き取り・資料調査を進めることができた。とくに,繰越予算を用いて実施された2013年の調査によって,多くの漢文で書かれた経巻類を撮影記録できたことは,今後の分析にとって頗る重要であり,大きな成果である。
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Strategy for Future Research Activity |
それぞれの研究分担に応じ,各自が研究テーマを持ちより,ワークショップを企画する予定である。このワークショップには,関連する研究分野の外国人研究者を招聘し,プロジェクトメンバーだけではカバーできない領域を補い,かつ相互の討論をつうじて問題意識を共有するとともに,最終年度内に論文集を刊行することを目指したい。
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