2011 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
23320031
|
Research Category |
Grant-in-Aid for Scientific Research (B)
|
Research Institution | Kyoto University |
Principal Investigator |
岡田 温司 京都大学, 大学院・環境学研究科, 教授 (50177044)
|
Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
篠原 資明 京都大学, 大学院・人間・環境学研究科, 教授 (60135499)
木俣 元一 名古屋大学, 大学院・文学研究科, 教授 (00195348)
阿部 成樹 中央大学, 文学部, 教授 (90270800)
秋庭 史典 名古屋大学, 大学院・情報科学研究科, 准教授 (80252401)
前川 修 神戸大学, 文学部, 准教授 (20300254)
|
Keywords | 眼差し / 観客 / 美術館・博物館 / 目 / 展示 / 視覚装置 / 肖像 / 変身 |
Research Abstract |
初年度である本年度の第一回目の研究会(京都大学大学院人間・環境学研究科、2011年7月24日)において、代表者である岡田温司が、本科研の趣旨説明をおこなうとともに、西洋の古代から近代における「デスマスク」というテーマで研究報告をおこなった。続いて、共同研究者である名古屋大学の秋庭史典が、「美術館・博物館における観客の眼差し」というテーマで研究報告をおこなった。これは秋庭自身が関わっている名古屋大学博物館における展示を例に、観客の眼差しの展示の効果について、批判的考察を加えたものである。1月13日~20日までの期間、名古屋大学の木俣元一が、ミュンヘンのアルテピナコテークで中世美術の調査と資料収集に当だった。2月16日~22日までの期間、岡田、金井直、喜多村明里、門林岳史は、イタリアのトリノとボローニャとローマとナポリにて、「アルテ・ポーヴェラ」に代表されるイタリア現代美術の展覧会と観客について、現地で調査と資料収集を共同でおこなった。この間、海外協力者であるローマ大学のジュゼッペ・パテッラ教授と情報交換をおこなった。3月17日~23日まで、秋庭史典は、ベルリン自然史博物館ほかで、引き続き博物館の展示と観客の眼差しというテーマで、現地調査と資料収集をおこなった。3月8日~18日まで、シエナ大学古典学教授のマウリツィオ・ベッティーニ教授を招聘し、とりわけ肖像の表象における「仮面」と「変身」、「眼差し」と「目」というテーマに関して、講演会とセミナーと通じて、意見交換と情報交換をおこなった。古代ローマではたとえば、ウェルトゥムヌスという神話の登場人物は、様々なアイデンティティを装うことで知られる。その名は、ラテン語で「変化すること」を意味する「ウェルテレ」から由来するとされる。古代神話には変身する神々たちで溢れているが、この神の変身で特徴的なのは、自然現象や動物等に変身するのではなくて、常に何らかの社会的な役割を担うキャラクターに変身するという点である。そのことは、オウィディウスの『変身物語』やプロペルティウスの『エレギア』からも推し量ることができる。その変身には、「他者の眼差し」というテーマが密接に関わっている。こうしたウェルトゥムヌス的な変身のテーマは、肖像の問題を考える上で極めて示唆に富んでいる。たとえば、16世紀の画家アルチンボルドが描いた《ウェルトゥムヌスとしてのルドルフ2世の肖像》は、その意味で象徴的である。肖像の問題は、モデル本人とその絵との関係にのみ限られるわけではない。誰がそれを見るのか、その社会的な機能はどこにあるのかといった点も重要となる。そのとき、いったいそのモデルは、その肖像を描かせることでいかなる役割を演じようとしているのかが問われる必要があるだろう。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
共同研究者による、ドイツ、フランス、イタリアでの海外調査がそれなりの成果を挙げている。また、海外研究協力者の招聘とセミナー、意見交換も実現し、とりわけ古代ローマの問題について大きな成果を得ることができた。
|
Strategy for Future Research Activity |
前年度の海外調査を踏まえたうえで、実際に調査に当たった木俣、金井、秋庭、門林による調査報告を中心に進める予定である。なお、5月27日(予定)には、フィレンツェにあるハーバード大学のイ・タッティ研究所所長リーノ・ペルティレ教授により、「ダンテ『神曲』における眼差し」というテーマで、セミナーをおこなう予定である。
|
Research Products
(11 results)