2012 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
23320032
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Research Institution | Kyoto University |
Principal Investigator |
根立 研介 京都大学, 文学研究科, 教授 (10303794)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
平川 佳世 京都大学, 文学研究科, 准教授 (10340762)
中村 俊春 京都大学, 文学研究科, 教授 (60198223)
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Project Period (FY) |
2011-04-01 – 2015-03-31
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Keywords | 転換期 / 時代区分 / 個人様式の変遷 / 時代様式 / 流派様式 / 古代 / 中世 / 近世 |
Research Abstract |
当該年度は、研究の二カ年度目に当たり、初年度に続き研究代表者・研究分担者・連携研究者が各自の研究テーマに従い、個別テーマの資料収集に努めた。なお、研究は、「日本及び中国彫刻史班」、「日本近世及び近代絵画・工芸班」、「西洋美術史班」の三つの班に分かれて進めているが、主な資料収集としては、「日本及び中国彫刻史班」については、国内では京都・法金剛院阿弥陀如来像などの定朝様彫刻の関連資料収集や、兵庫・浄土寺阿弥陀如来像など快慶関係資料の収集、さらには滋賀・西教寺阿弥陀三尊像、香川・根香寺智証大師像や香川・清立寺阿弥陀如来像などの鎌倉時代彫刻基準作例資料の収集などを行った。また、海外では、根立が中国河南省・山西省における唐代から宋代にかけての唐宋変革期彫刻資料収集調査や、香港における宋代彫刻資料収集調査を行った。なお、根立は鎌倉美術との比較がしばしばなさせるロマネスク、ルネッサンス美術関係の資料収集をイタリア、スペイン、フランスで行った。さらに、「日本近世及び近代絵画・工芸班」は、大和文華館・京都国立近代美術館、国会図書館などで資料収集を行い、「西洋美術史班」は、分担研究者の平川佳世がオランダでフランドル、ドイツ近世美術などの関係資料の収集を、連携研究者の劔持あずさがフランス及びイギリスでルネッサンス期の美術資料の収集を行った。 こうした資料収集と並んで、11月には研究代表者・研究分担者・連携研究者を招集して公開研究会を開催し、研究成果の中間発表会を行った。この研究会では、平川がドイツ美術史の転換期についての、宮崎が江戸琳派の転換期についての研究発表を行い、さらに研究協力者の田中健一が飛鳥彫刻史の転換期に関する研究発表をった。さらに、7月には、ドイツ・ハイデルベルク大学のベアトリス・ヘラーによる日本中世絵画の転換期を巡る研究発表会を開催した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
該当年度の第一の目標は、昨年度と同様に資料収集にあるので、これらの進展について最初に記述する。 「日本及び中国彫刻史班」については、京都市内を中心に定朝様や安阿弥様などの資料収集とともに、鎌倉時代彫刻の基準作例の資料収集が進んだ。また、中国・唐宋変革期の問題に焦点を当てた資料収集も昨年度に継続して行った。特に、鎌倉時代基準作例の資料収集については、滋賀県及び香川県での調査に進展があった。ただし、定朝様及び安阿弥様の資料集については、関連遺品が多いので、もう少し調査対象を広げる必要があるように思われた。また、中国・唐宋変革期の資料収集については、中国美術を専門とする連携研究者の稲本が、体調を崩し、中国での調査旅行を取りやめたため、若干計画に遅れが生じている。 「日本近世及び近代絵画・工芸班」については、当初計画と多少異なるが、琳派関係の資料収集が進んだ。反面、狩野派関係の資料収集が少し遅れているが、来年度は京都国立博物館で大規模な京狩野の展覧会が開催されるので、それに合わせて資料収集を進めたい。「西洋美術史班」については、ドイツ美術史の中世と近世の転換期にかかわる資料収集やイタリアルネッサンスに関する資料収集は進んだ。ただし、フランドル・オランダ絵画の資料収集については、進展が若干遅れているところがある。このように資料収集作業については、、一部計画の進展に若干の遅れがあるが、全体的には着実に進展したと思われる。 なお、研究成果の中間発表であるが、3月に予定していた研究会が開催できなかった。ただし、11月の研究会では、研究協力者一人の発表を追加しており、また外国人研究者を招いた特別発表会を開催することができたの。研究成果の発表については、若干発表者の数は減ったものの、ほぼ当初の計画を満たすことができた。
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Strategy for Future Research Activity |
当該年度は研究の二カ年年度であるが、収集した資料がかなり増えてきたこともあり、各人の研究テーマがより鮮明になってきたところもある。このことは、昨年度から問題になっており、資料収集の進展に伴い研究対象を多少変更する必要性が生じている。具体的には、「日本及び中国彫刻史班」の中国美術史の転換期に関わる問題で、中国美術史研究については、今後は特に唐宋変革期の問題に焦点を当てることにした。ただし、唐宋変革期の問題は、中国美術史史上の大きな問題であり、この問題を改めて検討するためには、より広範囲の資料収集が必要になり、特に宋代美術資料の収集をより積極的に行う必要性が生じている。したがって、今後は唐代のみならず宋代、あるいはそれに関連する遼・金代美術の資料収集を積極的に行うことにしたい。また、日本彫刻史に関しては、和様が成立する平安中期の様式展開をより明瞭に把握する必要性が出てきた。この問題の解明については、彫刻作品の資料収集のみでは解決せず、日本史学や国文学で近年進展が著しい国風文化研究の研究成果を踏まえた新たな再検討を行う必要がある。今後は、こうした関連研究領域の研究をも参考にしつつ、「日本及び中国彫刻史班」で検討を加えていきたい。 「日本近世及び近代絵画・工芸班」については、琳派の転換期の重要性が一層認識されてきた。このことに関して、宗達、光琳ら、江戸時代前期の琳派のみならず、江戸時代後期のいわゆる江戸琳派の資料収集、あるいは近代以降の琳派に影響された工芸品などの資料収集の必要性が感じられ、今後はより広範囲の琳派関係の資料収集を積極的に行うことにしたい。 なお、「西洋美術史班」については、フランドル・オランダ美術史の転換期に関する資料収集が若干遅れているが、研究はほぼ順調に進展しているので、今後も各人の研究テーマに従って資料収集を進めたい。
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Research Products
(6 results)