2011 Fiscal Year Annual Research Report
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23320071
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Research Institution | Doshisha University |
Principal Investigator |
諫早 勇一 同志社大学, 言語文化教育研究センター, 教授 (80011378)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
望月 哲男 北海道大学, スラブ研究センター, 教授 (90166330)
望月 恒子 北海道大学, 文学研究科, 教授 (90261255)
鈴木 淳一 札幌大学, 外国語学部, 教授 (40179221)
中村 唯史 山形大学, 人文学部, 教授 (20250962)
大平 陽一 天理大学, 国際学部, 教授 (20169056)
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Keywords | 移動 / 旅 / 文化の越境 / 風景と視覚 / ロシア文学 / 中東欧文学 / 亡命文学 / 移動手段 |
Research Abstract |
追加内定の連絡が届いたのが11月だったため、研究の開始は大幅に遅れたが、急遽2月に3つの科学研究費補助金による合同研究会「亡命と移動の視点から見たロシア」を開催して、研究分担者の大平が「移動的視覚:その歴史に関する走り書き的報告」と題した報告を行って、20世紀の映画理論を参照しつつ、移動する視点から眺められた風景の文学的描写について論じたほか、研究代表者の諫早は、内戦後のモスクワ芸術座のヨーロッパ移動の実態と意義について報告するとともに、ドイツとロシアの国境だったアイトクーネンをめぐって、移動が文化の越境につながる実例を19・20世紀文学から紹介した。 短い研究期間ではあったが、このほか19世紀ロシア文学に関しては、鈴木が19世紀の移動手段の歴史とドストエフスキイの4度にわたる国外旅行の意味について合同研究会のラウンドテーブルで報告を行い、望月(哲)はアポロン・グリゴーリエフら19世紀文人のヴォルガ地域での移動・旅について、ヴォルガの文化・文芸表象との関連で論考をまとめている。また、中村は19世紀末から20世紀前半のロシア・ソヴィエト文学における移動の表象について、ゴーリキイ、ベルゴーリツらを中心にテキスト分析を行って成果を発表した。 20世紀ロシア文学では、望月(恒)がブーニンを中心に亡命文学における移動について研究を進め、中東欧文学では、阿部がヤーヒム・トポルらチェコ語作家の著作を中心に現代東欧文学における移動の位相について考察して学会発表を行っている。 本年度は各人の関心に即してそれぞれ研究を進めたが、次年度以降はそれらをまとめつつ、「移動の詩学」の構築に向けて研究を収斂させていきたい。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
11月の追加内定だったため、組織としての研究開始は大幅に遅れたが、研究分担者の従来の研究に近いテーマだったためもあって、2月に急遽開催した合同研究会のラウンドテーブルでも活発な議論が交わされ、本年度中にかなりの数の業績もまとめることができた。「移動の詩学」構築に向けて、メンバー内の意識の統一はかなりできたと評価できる。
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Strategy for Future Research Activity |
平成24年度も基本的には19世紀ロシア文学、20世紀ロシア文学、中東欧文学の3つの柱に、文芸理論、映画論、風景論などの視点も交えて、各人で研究を進めていきたい。また、本年度は合同研究会を含めて最低2回は研究会を開催し、各人の研究をたがいに検証し合いたいと考えている。 なお平成25年4月に、カナダから近代ロシア文学における移動研究の第一人者であるユーリイ・レヴィング教授を国際シンポジウムに招聘することが内定したので、その国際シンポジウムに向けて、メンバーの共通理解をいっそう深めていきたいと考えている。
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Research Products
(20 results)