2012 Fiscal Year Annual Research Report
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23320071
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Research Institution | Doshisha University |
Principal Investigator |
諫早 勇一 同志社大学, 言語文化教育研究センター, 教授 (80011378)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
大平 陽一 天理大学, 国際学部, 教授 (20169056)
中村 唯史 山形大学, 人文学部, 教授 (20250962)
鈴木 淳一 札幌大学, 外国語学部, 教授 (40179221)
望月 哲男 北海道大学, スラブ研究センター, 教授 (90166330)
望月 恒子 北海道大学, 文学研究科, 教授 (90261255)
阿部 賢一 立教大学, 文学部, 准教授 (90376814)
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Project Period (FY) |
2011-11-18 – 2014-03-31
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Keywords | ロシア文学 / 移動 / 時空間感覚 / 亡命文学 / モダニズム |
Research Abstract |
2013年4月末から5月初旬にかけて、ダルハウジー大学(カナダ)のユーリイ・レヴィング教授を招聘して京都大学、北海道大学、東京大学の3大学で研究会を開催することになり、その準備期間となった本年度は、シンポジウム「都市と交通の風景論」を11月30日に鹿児島大学教育学部で開催しただけだったが、研究代表者の諫早が行った「隠された鉄道と目に見える鉄道:ロシアの街とドイツの街」と題した基調報告、研究分担者の鈴木が行った報告「19世紀ロシア文学と交通手段」などをめぐって活発な議論が行われ、近代ロシア文学において重要な役割を果たしている交通手段の意義について、ドイツやフランスなどとの比較の視点からも理解が深まった。 各人の研究に関して触れれば、諫早は鉄道がことのほか存在感を占める街ベルリンを舞台にした亡命文学とソヴィエト文学を比較検討しつつ、アーバニズムと移動について検証を進め、望月(哲)はヴォルガやシベリアを舞台に、19世紀ロシア文学と地理的な移動のかかわりについて考究しながら、視野をアジアにも広げている。また、望月(恒)は亡命作家ブーニンを例に、亡命者の視点から見た祖国などについていくつか論考を発表しているし、鈴木はドストエフスキイ、トルストイらの創作における移動(旅行)の意味について検討を続けている。さらに、中村はコーカサスやアルメニアなどの南方に関する表象が、近代ロシア文学に占める位置について考察を深め、大平は前年に引き続き、ヨーロッパ文化における移動的視覚の歴史をたどりながら、詩学の移動にも関心を広げている。そして、阿部はロシア系チェコ語文学の系譜について調査を行いつつ、非ロシア語の移動文学の広がりについても検討をはじめている。 以上のような研究の進展は、後に掲げる業績表からもうかがえるように、着実な成果として結実しつつある。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本年度は1回しか研究会を開催できなかったが、その研究会にはドイツ文学、日本文学の研究者などロシア文学以外の研究者も参加して活発な議論が行われ、ロシアの街(ペテルブルグやモスクワ)とベルリン、パリ、ロンドンなどの対比のなかで、近代ロシア文学と移動の関係が近代ヨーロッパ文学の中で持つ特殊性が認識され、研究に新たな進展がみられた。 また、ロシア文学と南方表象(中村、望月(哲))、亡命ロシア文学と移動(望月(恒)、諫早)など、他の科学研究費の研究会にも参加している研究分担者も、それぞれの場で新たな知見を得ることができ、後の業績表にも見られるように、その成果はさまざまな機会に発表されている。 最終年度に当たる次年度は「移動の詩学」に関する著書もあるユーリイ・レヴィング教授を招聘して研究会を開くことがすでに決定しており、教授のサジェスチョンを得て、さらなる研究の深化と、新たな「移動の詩学」の形成が期待される。
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Strategy for Future Research Activity |
これまで3つの時代という縦軸:1.プーシキンからトルストイ、ドストエフスキイまで、2.チェーホフから亡命文学まで、3.ロシア・中東欧のモダニズム文学、と3つの大きなテーマという横軸:1.技術革新と移動の前景化、2.移動と時空間感覚、3.移動と文学表現、とを交差させながら研究を進めてきたが、最終年度に当たる本年度は、5月2日に「移動の詩学」に関する著書もあるカナダ・ダルハウジー大学のユーリイ・レヴィング教授を招いて北海道大学で「「移動の詩学」の可能性を求めて」と題した研究会を催し、教授から直接サジェスチョンを受け、「移動の詩学」の全体像に迫りたいと考えている。このほか、4月30日には京都大学で、5月7日には東京大学でレヴィング教授の講演会を開き、教授からさらに多くのものを学びたいと希望している。 その後、研究分担者がそれぞれの研究を進めたのち、9月頃東京で最後の研究会を開催し、研究分担者全員が参加するシンポジウムの形で、研究成果を披露するとともに、互いに成果を検証し合いたい。 そして、年度末には「近代ロシア文学における「移動の詩学」」と題した論文集をまとめて、ネット上に公開したいと考えている。また、一部は国内外の研究会でも報告する予定である。
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Research Products
(23 results)