2014 Fiscal Year Annual Research Report
印欧語史的動詞形態論研究の新展開:アナトリア諸語の役割
Project/Area Number |
23320084
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Research Institution | Kyoto University |
Principal Investigator |
吉田 和彦 京都大学, 文学研究科, 教授 (90183699)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
森 若葉 国士舘大学, 付置研究所, 研究員 (80419457)
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Project Period (FY) |
2011-04-01 – 2015-03-31
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Keywords | アナトリア諸語 / ヒッタイト語 / 印欧祖語 / 歴史言語学 / 印欧語比較文法 / 語幹形成母音 / アクセント / 再建 |
Outline of Annual Research Achievements |
一般に受け入れられている見方によれば、語幹形成母音によって特徴づけられるヒッタイト語の能動態動詞は印欧祖語に再建される語幹形成母音*-e/o-の交替を保持していると考えられている。しかしながら、問題となる動詞を歴史言語学的な立場から分析した結果、前ヒッタイトの時期に、さらにはアナトリア祖語の時期に、語幹形成母音*-o-を再建する実質的な根拠が見出せないことが分かった。ヒッタイト語の能動態動詞のパラダイムに共時的にみられる語幹形成母音-a-は印欧祖語の*-o-には由来しない。この-a-は多くの場合、「アナトリア祖語の*eは共鳴音が後続する開音節の位置でアクセントが先行する場合、ヒッタイト語でaになる」という音法則によって歴史的に説明することができる。また楔形文字ルウィ語の3人称単数過去形にみられる-(i)a-については、母音*oを含む*-o-に由来すると考えられるが、この*-o-は能動態ではなく、中・受動態の特徴を継承している。以上の分析によって、アナトリア祖語の能動態動詞パラダイムにふくまれる語幹形成母音については、*-e-が一貫して再建されなければいけないことを主張したい。ここで引き出された知見は、語幹形成母音*-e/o-はパラダイム内部で交替するという伝統的な印欧語比較文法においてとられている見方と根本的に相容れない。アナトリア祖語に一貫して再建される*-e-がアナトリア語派が分岐する以前の印欧祖語の状態を保持している特徴なのか、それともアナトリア語派内部での革新的特徴なのかは、今後検証していかなければならない重要な課題である。
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Research Progress Status |
26年度が最終年度であるため、記入しない。
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Strategy for Future Research Activity |
26年度が最終年度であるため、記入しない。
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