2012 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
23320132
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Research Institution | National Museum of Japanese History |
Principal Investigator |
村木 二郎 国立歴史民俗博物館, 大学共同利用機関等の部局等, その他 (50321542)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
小野 正敏 大学共同利用機関法人 人間文化研究機構本部, 大学共同利用機関等の部局等, その他 (00185646)
藤澤 良祐 愛知学院大学, 文学部, 教授 (10387566)
仁藤 敦史 国立歴史民俗博物館, 大学共同利用機関等の部局等, その他 (30218234)
松田 睦彦 国立歴史民俗博物館, 大学共同利用機関等の部局等, その他 (40554415)
齋藤 努 国立歴史民俗博物館, 大学共同利用機関等の部局等, その他 (50205663)
坂井 秀弥 奈良大学, 文学部, 教授 (50559317)
福島 金治 愛知学院大学, 文学部, 教授 (70319177)
日高 薫 国立歴史民俗博物館, 大学共同利用機関等の部局等, その他 (80230944)
金沢 陽 公益財団法人出光美術館, その他部局等, その他 (90392886)
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Project Period (FY) |
2011-04-01 – 2014-03-31
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Keywords | 技術史 / 中世史 / 考古学 / 生産遺跡 / 石丁場 / 南蛮漆器 / 漆器 / 陶器 |
Research Abstract |
中世の技術を総合的に調査・研究することを目的としている。今年度は3年間の2年目にあたり、個別具体的な調査にとりかかった。 石製品の技術については、伊豆・相模の安山岩石丁場、および小豆島の花崗岩石丁場を丹念に調査した。その際に注目したのは矢穴痕である。大量の石切需要に応じて、職人的技術ではなく技術を一般化したために無駄は多いが失敗の少ない方法が開発された可能性を追究している。これは従来にない視点と言えよう。 外来技術の融合に関しては、東南アジア産の質の悪い漆代用品(チチオール、ラッコール)を用いた南蛮漆器生産の一端を見出した。これらはタイやベトナムから、現地の壺や甕に入れて日本国内に輸入されている。京都市の平安京左京三条四坊十町跡では、こういった漆代用品を入れた容器が複数点出土している。さらにこの遺跡は真鍮生産工房としての性格が、大量の坩堝や原料の残滓などから判明している。南蛮漆器に多用されている金具は真鍮が基本であるが、真鍮生産の状況が不明であったことから、海外での作りなおしの可能性が指摘されていた。しかしこういった考古学的状況証拠が判明したことにより、金具も当初より日本国内で生産したものを使用したことが明らかになった。また、南蛮漆器の金具には、いわゆる「キーホール」型の鍵穴が付いている。古代以来の海老錠型の鍵ではなく西洋型鍵が使われている。このことも金具は海外での後補と考えられた根拠であったが、長崎、有田、杵築、駿河などで中世末~近世初頭の西洋型鍵が出土していたことが今年度の調査で明らかになった。これらのことから、中世に培われた技術が海外からの技術や文物を融合して、さらなる展開を見せていくことを具体的に明らかにすることができた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
中世における技術の総体を、考古学を主体に中世史、都市史、城郭史、陶磁史など多様な視点から統合することを目的としている。 従来の城郭史研究の中で考えられてきた石垣生産技術を問い直し、技術とは先端的な職人技だけではなく、一般化という方向もありえたことを導きつつある。この発想のもと、具体的に資料から実証する方法を編だした。来年度はその方法によって、多くの石丁場資料を測定していき、新しい理論を立てる目処が立った。 また、南蛮漆器とその周辺技術を追究することで、中世末期における海外技術をも取り込んだ複雑な技術融合の実態に迫りつつある。考古学だけではなく、分析科学、美術工芸史、文献史といった様々な専門家たちが取り組むことで、大きな成果があがってきている。今後の分析対象、方針も整っており、最終年度にむけて順調な調査が進んでいる。
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Strategy for Future Research Activity |
初年度に主として取り組んできた中世の人びとの生活を支えた生産技術、2年度に取り組んだ権力者や有力者たちの範疇に入る美術工芸品、モニュメントにまつわる生産技術の、両面で成果があがりつつある。最終年度である3年目は、これらを統合して、中世技術の全体像を明らかにしたい。 そのためにも、関連する資料群を集めた企画展示を開催したい。さらに、それに関連した研究イベントを実施し、多分野の研究者が会して議論をすることを考えている。 また、2年度で新しく編みだした石丁場での技術の一般化、南蛮漆器の分析など、残る課題を一つずつ解決することで、物質資料に基づいた中世の技術史解明を果たしたい。
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Research Products
(13 results)