2011 Fiscal Year Annual Research Report
擦文文化期における環オホーツク海地域の交流と社会変動
Project/Area Number |
23320166
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Research Category |
Grant-in-Aid for Scientific Research (B)
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
熊木 俊朗 東京大学, 大学院・人文社会系研究科, 准教授 (20282543)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
大貫 静夫 東京大学, 大学院・人文社会系研究科, 教授 (70169184)
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Keywords | 考古学 / 擦文文化 / 環オホーツク海地域 / オホーツク文化 / アイヌ文化 |
Research Abstract |
1.北海道北見市における擦文文化集落遺跡の発掘調査 擦文文化の集落に関する考古学的データを収集するため、北見市大島2遺跡にて擦文文化集落遺跡の発掘調査を実施した。本遺跡は、海に面した高位段丘上という得意な場所に立地しており、生業や集落の機能、オホーツク(トビニタイ)文化との関係などに関して、周囲の集落とは異なる性格を有していた可能性が考えられる重要な遺跡である。本年度の調査では前年度に着手していた1号竪穴を完掘するとともに、2号竪穴の発掘も開始した。主要な成果は以下のとおりである。(1)1号竪穴は擦文文化後期(11世紀後半頃)の竪穴住居であり、2号竪穴は層位的に1号竪穴より新しい。(2)1号竪穴・2号竪穴ともに廃絶時に火を受けた焼失住居である。(3)2号竪穴の表土より、トビニタイ土器と関係するとみられる土器片が出土している。(1)の成果は、これまで判然としなかった本遺跡の時期が確定させるものである。(2)の成果は、オホーツク文化やアイヌ文化の「家送り儀礼」との関連を考える上で重要である。(3)の成果は、オホーツク(トビニタイ)文化との関連を示す成果である。以上の成果は、本遺跡のもつ重要性を端的に示すものであると同時に、アイヌ文化の形成過程に関する議論に一石を投じるものといえる。 2.擦文文化の竪穴住居と集落に関する既存資料の分析 擦文文化の竪穴住居に関するデータ、特に柱穴の位置などの上屋構造に関するデータや廃絶時の焼失の有無に関するデータを中心に、発掘報告書等から収集してデータ化した。 3。擦文文化・オホーツク文化の出土遺物調査 擦文文化とオホーツク文化の出土考古遺物について、特に未報告資料を中心に図化と分析をおこなった。本年度は北見市トコロチャシ跡遣跡と網走モヨロ貝塚出土資料を主な対象として作業を実施した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
予定していた遺跡の発掘調査は計画どおり進捗しており、出土遺物の整理・分析も予定どおり進行中である。また、既存資料のデータベース化も予定どおり進行している。
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Strategy for Future Research Activity |
北見市大島2遺跡の発掘調査に関しては、最終年度の平成27年度まで調査を継続し、出土した資料については順次分析を進める。 擦文文化集落遺跡のデータベースについては、平成26年度までデータの集成を継続し、最終年度にはそれらのデータの分析をおこなう。 擦文文化・オホーツク文化の出土遺物調査に関しては、平成24年度に調査成果の中間報告書を刊行する。 以上の成果をもとに、最終年度にシンポジウムを開催して研究成果の総括をおこなうとともに、研究成果報告書を刊行する。
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Research Products
(3 results)