2013 Fiscal Year Annual Research Report
擦文文化期における環オホーツク海地域の交流と社会変動
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23320166
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
熊木 俊朗 東京大学, 人文社会系研究科, 准教授 (20282543)
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Project Period (FY) |
2011-04-01 – 2016-03-31
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Keywords | 考古学 / 擦文文化 / 北海道 / 環オホーツク海地域 |
Research Abstract |
1.北海道北見市における擦文文化集落遺跡の発掘調査 擦文文化の集落に関する考古学的データを収集するため、北見市大島2遺跡にて擦文文化集落遺跡の発掘調査を実施した。本遺跡は海に面した高位段丘上という特異な場所に立地しており、河川沿いの低地や砂丘に位置する周囲の集落とは異なる性格を有していた可能性が考えられる重要な遺跡である。本年度の調査は、一昨年度より調査継続中の2号竪穴について調査を実施し、同竪穴を完掘した。この2号竪穴については、昨年度までの調査で、擦文文化後期~晩期(11世紀後半~12世紀)のやや大型の竪穴住居で、廃絶時に火を受けている焼失住居であることが確認されていたが、本年度の調査でさらに以下のことが判明した。①竪穴内の柱穴の配列が確認され、四隅に近い位置に主柱穴が4基確認されたほか、径の細い柱穴が竪穴の北壁と西壁の壁際と、その約1mの平行ライン上で2~3基ずつが対になるように配列されている様子が確認された。②住居の付帯設備として、南壁にカマドが2基確認されたが、そのうち西側のカマド付近では、カマドの構築材とみられる焼けた粘土に挟まれた形で、カマドの芯材とみられる細い木材が、炭化した状態で格子状に重なって検出された。①の成果は住居内のベンチや間仕切りなど、竪穴の空間構造を知る上で重要なデータを提供するものである。②については、このような形でカマドの構造が確認されたのは初めてであり、当時の建築技術を知る上で貴重な成果を得ることができた。 2.遺跡出土資料の自然科学的分析等 大島2遺跡から出土した炭化材について、研究協力者に樹種同定を依頼し、協同でサンプリング作業を実施した。分析の結果は平成27年度に報告の予定である。ほかに、擦文文化の竪穴住居に関する既存資料について、熊木と國木田が発掘報告書や所蔵資料からデータの収集と整理をおこなった。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
予定していた北見市大島2遺跡の発掘調査は、完掘した住居の軒数が2軒と、計画よりも進捗がやや遅れているが、これは平成23年度・平成24年度に出土遺物が予想を大幅に超えて大量に出土したためである。その分、質量ともに充実したデータが得られており、最終的な研究成果は当初の計画以上のものが期待できる。 遺跡出土資料の分析については出土遺物の量の増加に対応した取り組みをおこなっており、遺物や遺構の図化作業に加えて、予想を超えて出土した炭化材についても研究協力者に依頼して分析をすすめるなど、順調に進展している。以上のことから、最終的な研究の総括については予定どおりの実施が十分可能な状況にある。
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Strategy for Future Research Activity |
北見市大島2遺跡の発掘調査に関しては最終年度の平成27年度まで調査を継続して3号竪穴の発掘調査を完遂する。 出土した資料については、最終年度の報告書の刊行に向けて順次、図化や分析を進める。平成26年度には1号・2号竪穴の遺構関連の図を完成させるとともに、出土遺物の接合・復元作業を終わらせる予定である。炭化材の分析については平成26年度中に中間評価をおこない、住居の上屋や空間構造の分析に反映させる。炭化種子の同定、放射性炭素年代測定等の自然科学的な分析については平成26年度から研究協力者の協力のもと、分析を進める。 以上の成果をもとに、平成26年度には1号・2号竪穴の調査成果の中間評価をおこない、平成27年度には3号竪穴の調査成果も加えて研究成果全体を総括し、研究成果報告書を刊行する。
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Research Products
(5 results)