2011 Fiscal Year Annual Research Report
途上国におけるコミュニティベースの災害復興戦略とリスク管理
Project/Area Number |
23320181
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Research Category |
Grant-in-Aid for Scientific Research (B)
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Research Institution | Nagoya University |
Principal Investigator |
高橋 誠 名古屋大学, 環境学研究科, 教授 (30222087)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
田中 重好 名古屋大学, 環境学研究科, 教授 (50155131)
島田 弦 名古屋大学, 国際開発研究科, 准教授 (80410851)
海津 正倫 奈良大学, 文学部, 教授 (50127883)
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Keywords | 自然災害 / コミュニティ / 災害復興 / リスク管理 / 脆弱性 / 国際研究者交流 |
Research Abstract |
文献研究とこれまでの当研究チームの研究レビューを行い、災害研究に関するコミュニティアプローチを、①空間/場所、②普通の人々、③ローカル社会組織の3側面に注目して理論的に整理し、研究枠組みを構築するとともに、それぞれ、被害と復興の地域差と場所間の関係および物理的改変と社会的再編、②一般の生活者の言説分析による被災体験の再評価、③災害復興および備えに関わる社会組織のフォーマル-インフォーマル関係という具体的研究課題として提示した。①に関しては、アチェ地域の津波災害後の都市構造の再編、特に郊外化の進展傾向を都市計画との対照によって分析したほか、ジョグジャカルタ地域では中部ジャワ地震の影響を調査し、入居しながら住宅を作り直すという現地復興のフレームを導出した。また、アチェの養殖業者などへのインタビューから、水産物の生産と流通の地域構造に関する被災前後の状況に大きな再編がほとんどなかったことを確認した。②に関しては、バンダアチェにおいて当研究チームがこれまで収集してきた被災者の語りを言説分析の枠組みで再整理し、被災と生活再建の状況に関するテクストを完成させた。③については、復興に対するコミュニティの役割に関するアチェとジョグジャカルタとの比較分析を行い、ハザードの規模や性格、政府とコミュニティとの関係、外部支援の特徴の3要因からまとめるとともに、インドネシアの公的防災体制の整備について法制度との関係から整理した。また、アチェ地域における高頻度災害へのコミュニティ対応に津波被災経験が及ぼす影響に関して、事例研究に着手した。ガジャマダ大学において学生セミナーを実施し、東日本大震災とスマトラ地震津波との比較研究について講演した。まだ予察的な段階ではあるが、これらの成果の一部は、国内外の学会等で発表するとともに、研究協力者と連携してインドネシアで学術書を出版した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
平成23年度においてアチェの有力カウンターパートのひとりが入院・急死するという不幸な出来事があり、そのパートであった漁業・養殖業の復興状況に関する現地調査体制を立て直す必要が生じた。それゆえ、繰り越し申請を行い認められたものである。平成24年度上半期において、他の研究協力者と研究打合せを行いつつ、アチェの養殖業者および流通業者に半構造化インタビューを実施し、調査戦略を具体的に再構築し、平成24年度以降に質問紙調査の実施可能性を具体的に検討することにした。
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Strategy for Future Research Activity |
暫定的に構築された研究枠組みに沿って、コミュニティアプローチの3側面に関してアチェとジョグジャカルタの両地域において、それぞれ津波と地震に関するコミュニティの災害対応に関する現地調査を行う。また、両地域に関しては他の災害との比較を通して発生頻度をめぐる時間軸に沿った分析を行う。具体的には、アチェでは、洪水対応などをめぐって津波後の公的防災体制の整備と地方自治体や地域コミュニティの再編が大きく関わることが分かっており、逆にジョグジャカルタの火山災害のような低頻度の場合地形改変によって集落放棄が生じている。これらを理論的枠組みに沿って整理する。また、東日本大震災との比較研究によって、途上国のコミュニティ対応の特性を明確にする点に関しては、これまでの予察的調査の結果、被害の地域差に係る構造に類似点と相違点があることが分かっており、それは途上国のみならず日本の津波防災を考える上で鍵である。とりわけ相違点をクリアにしていく中で津波災害と地理的リスクについて総合的に考察する。さらにアチェに関しては、実績概要で述べた②に関して、普通の人々のみならず、各界のリーダー層への半構造化インタビューを試行し、両者を対照させるとともに、長期的期間を振り返ったとき超巨大災害がローカル社会にどのような意味を持つかを分析する。普通の人々の言説に関しては、被災者の目線と国境を越えた学び合いという観点から日本での出版を目指す。また、調査戦略を再構築した経済・産業復興に関しては、持ち帰ったインタビュースクリプトを詳細に検討し、質問紙調査の実施に向けた具体的な方策について検討する。その際、水産業のみならず農業も考慮し、被災地と非被災地との関係、生産場所をめぐる地域スケールでの流通構造の再編も視野に入れる。可能であれば、インドネシアでのワークショップ開催と、本格的な学術書の出版を目指す。
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Research Products
(14 results)