2012 Fiscal Year Annual Research Report
途上国におけるコミュニティベースの災害復興戦略とリスク管理
Project/Area Number |
23320181
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Research Institution | Nagoya University |
Principal Investigator |
高橋 誠 名古屋大学, 環境学研究科, 教授 (30222087)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
海津 正倫 奈良大学, 文学部, 教授 (50127883)
田中 重好 名古屋大学, 環境学研究科, 教授 (50155131)
島田 弦 名古屋大学, 国際開発研究科, 准教授 (80410851)
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Project Period (FY) |
2011-04-01 – 2015-03-31
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Keywords | 自然災害 / コミュニティ / 災害復興 / リスク管理 / 脆弱性 / 国際研究者交流 |
Research Abstract |
昨年度に構築した研究枠組みに沿って、災害研究に関するコミュニティアプローチに係る3側面、①空間/場所、②普通の人々、③ローカル社会組織に焦点を置きながら、インドネシアのアチェおよびジョグジャカルタの現地調査を行った。まず①に関しては、予察的な統計分析と都市計画との対照の結果、津波前からのバンダアチェの郊外化傾向が津波被害による物理的環境と住宅投資状況の変化によって早まった傾向が指摘できる。それは、被災地からの公共施設等の移転が顕著なリングロード沿線において顕著である。また、ジョグジャカルタではムラピ山噴火に焦点を移し、それに伴う地形改変と集落移転との対応関係を把握した。②に関しては、バンダアチェにおいて当研究チームがこれまで収集してきた被災者の語りに関する言説分析をさらに進め、普通の人々の視線から見ると津波を生き抜く過程に大きく二つの段階があることを指摘した。また、リーダー層への半構造化インタビューを予察的に行い、津波後ないし紛争後のアチェ社会が一種の金融バブルの状態にあり、そこに災害資本主義が結び付く傾向を指摘した。③については、高頻度災害の事例として津波後の洪水対策の変化を取り上げ現地調査を行い、公的防災体制の整備と地方自治制度の分権化の結果、アチェのコミュニティ基盤としてガンポン=ムキン体制の復活が見られるが、一方で政府との関係で限界を抱えていることが予見された。なお、東日本大震災との被害構造に関する比較分析を行い、アチェでは見られなかった建物被害と人的被害との食い違い傾向とともに、その検討が日本の津波防災の鍵であることを指摘した。まだ予察的な段階ではあるが、これらの成果の一部は、国内外の学会等で発表するとともに、とりわけ②に関して、津波を生き抜く過程に関する普通の人々の視線からアチェと三陸との比較検討を行った研究書を出版した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
平成23年度は不慮の事案により少々遅れを生じ、繰り越し申請を行って、半年間の補足調査と研究計画、調査戦略の再構築を行った。また、当初予想された仮説が当てはまる部分と当てはまらない部分とを仕分けすることができ、その結果、研究計画のごく細部については微修正が必要であるが、当初予想された研究進捗状況に概ね追い付くことができた。
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Strategy for Future Research Activity |
暫定的に構築された研究枠組みに沿って、コミュニティアプローチの3側面に関してアチェとジョグジャカルタの両地域において、それぞれ津波と地震に関するコミュニティの災害対応に関する現地調査を引き続き行う。また、両地域に関しては他の災害との比較を通して発生頻度をめぐる時間軸に沿った分析を整理する。例えば、アチェでは洪水対応などをめぐって津波後の公的防災体制の整備と地方自治体や地域コミュニティの再編が大きく関わること、逆にジョグジャカルタの火山災害のような低頻度の場合地形改変によって集落放棄が生じていることなどを検討する。これらをさらに掘り下げて検討する。また、東日本大震災との比較研究によって、途上国のコミュニティの特性を明確にする。最後の点に関しては、これまでの予察的調査から指摘した、被害の地域差に係る構造に類似点と相違点があることを、途上国のみならず日本の津波防災を考えながら再概念化するが、とりわけ相違点をクリアにしていく中で津波災害と地理的リスクについて総合的に考察する。さらにアチェに関しては、実績概要で述べた②に関して、各界のリーダー層への半構造化インタビューを本格的に行い、両者を対照させるとともに、長期的期間を振り返ったとき超巨大災害がローカル社会にどのような意味を持つかを分析する。被災者の目線と国境を越えた学び合いという観点から行った出版に加え、当研究チームの行ってきた10年間の成果について学術書の出版を行いたい。また、調査戦略を再構築した経済・産業復興に関しては、インタビュースクリプトの検討をもとに、質問紙調査の実施に向けた具体的な方策について検討する。その際、水産業のみならず農業も考慮し、被災地と非被災地との相互関係、生産場所をめぐる地域的な流通構造の再編も視野に入れる。可能であれば、インドネシアでのワークショップを開催する。
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Research Products
(10 results)