2011 Fiscal Year Annual Research Report
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23330018
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
荒木 尚志 東京大学, 大学院・法学政治学研究科, 教授 (60175966)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
富永 晃一 信州大学, 経済学部, 准教授 (30436498)
池田 悠 北海道大学, 大学院・法学研究科, 准教授 (00456097)
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Keywords | 非正規雇用 / 有期労働契約 / パート労働 / 派遣労働 |
Research Abstract |
1、諸外国における有期契約規制の内容について、ドイツ、フランス、イギリス、スウェーデン、アメリカ、韓国の状況について検討を行い、有期契約規制が時代とともに変遷していること、多くの国において、いわゆる入口規制から出口規制に移行していること、入口規制を維持している国でも、当初考えられていたような臨時的必要のある場合以外にも、有期契約締結事由を拡張して有期契約締結可能性を認める傾向にあることなど、有益な知見が得られた。 なお、本科研費が追加承認される以前であったため、本科研費によってはカバーされなかったが、2011年9月にスペイン(セビリア)で開催された国際労働法社会保障法学会欧州地域会議においては、研究代表者荒木が参加し、有期契約規制について有益な討議を行った。 2、日本における有期労働契約規制については、研究代表者荒木が参加する労働政策審議会労働条件分科会において、労働契約法を改正し、有期契約の利用可能期間の上限を5年とする等の建議が採択され、法律案が国会に提出されることとなった。この政策論の展開にあたって、本科研費による日本法の分析成果、具体的にはいわゆるい「雇止め法理」の判例法理の到達点は何か、最高裁の3判決(東芝柳町工場事件、日立メディコ事件、松下プラズマディスプレイ事件)をどのように理解すべきか等の検討が大いに活用された。 また、有期契約利用についての規制のほか、非正規雇用と正規雇用の格差問題も大きな課題であるが、この点についても、欧州諸国における非正規差別禁止といわれている法理について検討を行った。その検討においては、差別禁止規制というより不利益取扱い禁止規制と理解するのが正確ではないかとの方向性を見いだすことができた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
科研費の承認が11月になってなされたため、23年度前半は、本科研費を利用しえなかった。そのため、当初予定した研究遂行には困難が生じたが、年度後半に科研費が活用できることとなり、諸外国の文献等の購入等も可能となり、ほぼ予定通りの成果を上げることができた。
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Strategy for Future Research Activity |
本年度は、今国会において労働契約法改正による有期労働契約についての新規制の導入という大きな変化が生ずることがよそうされるので、立法政策論のみならず、新規制についての解釈論についての研究も視野に入れることとする。また、成規・非正規の処遇格差問題についてもさらに本格的に検討を深める予定である。
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