2012 Fiscal Year Annual Research Report
労働市場における男女間格差の実態、発生要因およびその政策対応に関する研究
Project/Area Number |
23330074
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Research Institution | Doshisha University |
Principal Investigator |
川口 章 同志社大学, 政策学部, 教授 (50257903)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
木成 勇介 九州大学, 経済学研究科(研究院), 准教授 (10509855)
岸 智子 南山大学, 経済学部, 教授 (30234206)
大竹 文雄 大阪大学, 社会経済研究所, 教授 (50176913)
水谷 徳子 公益財団法人家計経済研究所, 研究部, 研究員 (60551075)
木村 寛子(奥平寛子) 岡山大学, 社会文化科学研究科, 准教授 (80550954)
脇坂 明 学習院大学, 経済学部, 教授 (90158600)
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Project Period (FY) |
2011-04-01 – 2014-03-31
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Keywords | 企業調査 / Web調査 / 学会報告 |
Research Abstract |
本研究の目的は、労働市場における男女間格差の実態および男女間格差発生の要因を明らかにすることである。なかでも、男女間賃金格差とそれをもたらす三大要因である勤続年数、就業形態、管理職比率における男女格差に焦点を当てる。 研究実施計画では、本プロジェクト参加者を「アンケート調査と計量分析」「インタビュー調査」「経済実験と計量分析」の三つの研究チームに分けて、互いに協力しながら研究を進めることにしている。 「アンケート調査と計量分析」のチームは、平成23年度に実施した大阪府下の企業調査をデータベース化し、その分析をおこなった。その結果、仕事と家庭の両立支援施策を実施している企業ほど、女性の就業継続率が高く、また女性管理職が多いことを発見した。また、ポジティブ・アクションの実施が女性管理職増加につながっていることが分かった。両立支援策とポジティブ・アクションが女性活躍推進の二大施策であることが確認された。 「インタビュー調査」のチームは、「アンケート調査と計量分析」のチームが実施したアンケートに回答した企業から十数社を選び、インタビューを実施した。その結果、中小企業では、女性社員のやる気をどのようにして引き出すかが共通の課題となっていることが分かった。女性社員の勤続年数はおおむね伸びているが、勤続年数に応じた高度な仕事をしたがらない、研修を受けたがらない女性社員が多く、それが女性活躍のネックとなっているという声が多かった。 「経済実験と計量分析」のチームは四つの高校で実施した、競争志向に対する男女差を確かめる経済実験の結果をデータベース化し、分析をおこなった。その結果、競争的報酬制度を好む男子生徒が同報酬制度を好む女子生徒の2倍いることが分かり、これまでの大学生を対象とした実験結果と大きな差がないことを発見した。また、兄弟姉妹の構成によって競争志向が有意に異なることも分かった。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本プロジェクトは参加者を「アンケート調査と計量分析」「インタビュー調査」「経済実験と計量分析」の三つの研究チームに分けて研究を進めている。これまでのところ、いずれのチームもおおむね順調に研究を進めている。 「アンケート調査と計量分析」のチームは、平成23年度に大阪府下の企業調査をおこなった。回収率は20%を超えることができず、やや不満な結果となったが、平成19年と21年におこなった同様の調査と合わせてデータベース化することにより、1000社を超えるサンプルを得ることができた。24年度はその分析をおこなった結果、両立支援策とポジティブ・アクションが女性活躍推進の二大施策であることが確認された。現在、分析結果を専門誌に投稿しており、今後は査読者の指示に従って論文を修正する。 「インタビュー調査」のチームは、「アンケート調査と計量分析」が実施した企業アンケートに回答した企業から十数社を選び、女性の活用実態についてのインタビューを実施した。その結果、中小企業では、勤続年数が伸びた女性社員のやる気をどのようにして引き出すかが共通の課題となっていることが分かった。これまで従業員に対するアンケートが実施できなかった点が不十分であるため、25年度は従業員に対するインタビュー調査の実施をおこなう。 「経済実験と計量分析」のチームは23年度に四つの高校で実施した、競争志向に対する男女差を確かめる経済実験の結果をデータベース化し、分析をおこない、論文を執筆し、研究会などで何度か報告し、専門誌に投稿するところまで進んでいる。今後は、専門誌の査読者の指示に従い、論文を修正する。
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Strategy for Future Research Activity |
昨年度までに行ったアンケート調査、インタビュー調査、経済実験などによって、研究に必要なデータは、かなり豊富になった。また、すでにそれらのデータの分析も進めており、セミナーやコンファレンスなどで発表した後、専門誌に投稿した論文も存在する。 今年度は、必要に応じて追加的なアンケート調査やインタビュー調査を行うが、研究の中心はあくまでデータの分析、論文の作成、セミナーやコンファレンスでの発表、専門誌への投稿に置く。以下、申請書に記載していた三つの研究チームごとに今年度の研究実施計画を説明する。 「アンケート調査と計量分析」のチームでは、平成23年に大阪府の中小企業に対して両立支援施策や女性の活躍についてアンケート調査を行った。本科研申請以前にも、平成19年と平成21年に同様の調査を行っており、計3回の企業調査のデータを統合すると十分研究に耐えうるデータが存在している。今年度は、そのデータベースを用いた分析と論文の作成を行う。 その一方で、労働者に対する調査はまだ十分とは言えない。平成25年にWeb調査を行ったが、両立支援に対する質問が中心であった。今年度は、正規労働者と非正規労働者の実態や両者の意識の違いについてアンケート調査を行い、正規・非正規間格差と男女間格差の関係を分析する。 「インタビュー調査」のチームは、平成24年に企業十数社に対してインタビューを行った。今年度は、労働者に対するインタビュー調査を行う。職務内容、教育訓練、報酬などに関して、男女間および正規・非正規間の処遇の違いに対する意識を調査する。 「経済実験と計量分析」のチームは、現在、平成23年に実施した競争志向の男女差についての実験のデータを分析し、専門誌に投稿しているが、それを査読者の指示に従って修正し、受理されることを目指す。
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