2012 Fiscal Year Annual Research Report
学校選択制度メカニズムのゲーム理論分析及び実験研究
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23330093
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Research Institution | Future University-Hakodate |
Principal Investigator |
川越 敏司 公立はこだて未来大学, システム情報科学部, 准教授 (80272277)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
安田 洋祐 政策研究大学院大学, 政策研究科, 助教授 (70463966)
瀧澤 弘和 中央大学, 経済学部, 教授 (80297720)
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Project Period (FY) |
2011-04-01 – 2014-03-31
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Keywords | 学校選択制度 / ゲーム理論 / マッチング理論 / 実験経済学 |
Research Abstract |
本研究では、学校選択制度メカニズムのデザインについて、マッチング理論と実験経済学による研究を行っている。公立小中学校における学校選択制度に関して、わが国でも東京都を始めとして導入が進んでいるが、特に、いじめや障害を理由として、生徒に入学に際し特別な配慮を行うアファーマティブ・アクション(積極的差別是正処置, AA)を導入する場合、どのような方法が適切であるかを、理論と実験の双方から検討を行っている。 平成24年度は、真の選好を表明することが支配戦略になっており、かつ安定なマッチングを生み出す受け入れ保留方式をベースにして、2種類のアファーマティブ・アクションについて検討した。特別な配慮が必要な生徒をマイノリティ、通常の生徒をマジョリティと呼ぶことにすると、マジョリティの席数に上限を設ける場合と、マイノリティの最低入学者数を確保する場合を検討した。理論的には、前者では生徒全体の厚生はおろか、マイノリティの厚生さえも下げる可能性があるが、後者にはそうした問題がないことがわかっている。 この両方式と、それと同値だが表現の仕方だけが異なる方式、合計4つについて実験室実験によって比較した。実験に先立ち、マッチングを計算する計算プログラムを開発した。なお、計算プログラムは実験における均衡計算だけではなく、実験後、実験データをブートストラップ法でシミュレーションしていくためにも用いることができる。 こうした準備の下、実験を行ったところ、同値な方式でも表現が違えば、その相対的な結果が異なること(フレーミング効果)、席数に制限を置くよりも、優先順位において優遇する方が理解されやすいことなど、理論では予想できないような発見もあった。その成果は、実験経済学の専門学会Economic Science Association他において発表された。現在その成果を論文としてまとめているところである。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
研究計画で予定していた通り、学校選択制度にアファーマティブ・アクション(積極的差別是正処置, AA)を導入した場合について、ゲーム理論によるモデル化を行い、実験室実験を通じて、いくつかの重要な結果を導けていると共に、マッチング計算のプログラムも完成し、その成果については国際会議でもよい評価を得ている。 実験で発見されたフレーミング効果や、真実表明の割合が比較的低いなどの問題については、実験計画を見直し、その原因をさらに究明する必要性が出てきたため、本年度も継続して実験を実施しなければならなくなったものの、総合的に見れば、研究は順調に進んでいると言える。
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Strategy for Future Research Activity |
昨年度の成果を踏まえ、本年度は研究論文としてまとめていく努力を行う。 ただし、昨年度の実験で発見されたフレーミング効果や、真実表明の割合が比較的低いなどの問題については、実験計画を見直し、その原因をさらに究明する必要性が出てきたため、本年度も実験を継続する予定である。実験自体は研究代表者と研究分担者の大学でそれぞれ分担して実施する。 その上で、データ分析を行い、最終的な成果を国際会議等で発表するとともに、論文を国際的な学術雑誌に投稿を行う予定である。
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