2011 Fiscal Year Annual Research Report
情報通信技術が雇用と社会的厚生に与える影響の政策シミュレーション
Project/Area Number |
23330098
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Research Institution | Kansai University |
Principal Investigator |
鵜飼 康東 関西大学, 総合情報学部, 教授 (70098101)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
渡邊 真治 大阪府立大学, 人間社会学部, 准教授 (80254449)
村田 忠彦 関西大学, 総合情報学部, 教授 (30296082)
榎原 博之 関西大学, システム理工学部, 准教授 (50194014)
千田 亮吉 明治大学, 商学部, 教授 (80179944)
竹村 敏彦 関西大学, ソシオネットワーク戦略研究機構, 助教 (00411504)
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Keywords | 政策シミュレーション / 情報通信技術 / マクロ経済学 / 計量経済学 / 日本経済 |
Research Abstract |
本研究の目的は、クラウドコンピューティングの経済的影響を分析し、動学的一般均衡モデルを用いて、シミュレーションすることである。モデル構築の手法は3つに大別される。第1に生産関数に情報通信技術指標を導入する手法、第2に効用関数に情報通信技術の影響を導入する手法、第3にモデルの内生変数として企業の参入障壁低下指標を盛り込む手法である。 平成23年度は、第1段階として、独自の動学的一般均衡モデルを構築するための準備作業を行った。6月から11月にかけて、鵜飼と竹村は、生産関数を設計するために、実務家に対する聞き取り調査を行った。その結果、クラウドコンピューティングにはパブリッククラウドコンピューティングとプライベートクラウドコンピューティングの2種類が存在することが判明した。パブリッククラウドコンピューティングは情報化関連固定費用を低下させる。これに対してプライベートクラウドコンピューティングは情報化関連可変費用を低下させるが、固定費用は上昇させる。また、渡邊は、理論的検討を行った結果、パブリッククラウドコンピューティングを導入した場合でもベンダーロックイン効果が働いた場合には中小企業への効果が限定的であることを発見した。さらに、鵜飼は労働所得格差に職場内PCの与える影響が劇的に低下し、職場外モバイルPCの影響が上昇していることを発見し、竹村は、労働者の情報セキュリティ意識が生産性に一定の効果を与えることを発見した。最後に、鵜飼は社会保障が生産性に与える効果について理論的・統計的確認を行った。 これを受けて、榎原、千田、村田は日本経済の現状について把握するために「クラウド化調査票」を設計し、1月に東京証券取引所上場企業2284社に郵送し、回答があった416社について集計作業を行い、3月に集計結果の検討を行った結果、産業別によるクラウド化の差が非常に大きいことが判明した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
実務家への聞き取り調査の結果、クラウドコンピューティングにパブリッククラウドコンピューティングとプライベートクラウドコンピューティングの2種類が存在することが判明した。この事実は、交付申請当初、モデル構築にパブリッククラウドコンピューティングのみを予想していた研究組織に理論的混乱をもたらした。したがって、日本企業に関して、当初予定していたよりも詳細なデータを必要とすることが判明し、第1次「クラウド化調査票」の設計や第2次「クラウド化調査票」の再設計について理論的検討を行う必要性が生じた。
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Strategy for Future Research Activity |
平成24年度に、中小企業対象のデータを収集するために第2次「クラウド化調査票」の設計および郵送アンケート調査を実施する。さらに平成23年度の調査結果の追跡調査のために第3次「クラウド化調査票」を設計し、Webアンケート調査を実施する。これによって、動学的一般均衡モデルによるシミュレーションを行うための各パラメーターの初期値を決定する。
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Research Products
(11 results)