2011 Fiscal Year Annual Research Report
資産価格相関の行動学的分析とファイナンス工学への応用
Project/Area Number |
23330104
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Research Institution | Kyoto University |
Principal Investigator |
江上 雅彦 京都大学, 経済学研究所, 教授 (40467395)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
若井 克俊 京都大学, 経済学研究科, 准教授 (80455708)
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Keywords | 資産価格相関 / ファイナンス / 行動学的分析 |
Research Abstract |
本研究は資産価格における相関関係の変化を心理的要因に基づいて理論化し、それを用いて資産市場データを分析するとともに、派生証券の価格付けやヘッジ方法を考察することを目的としている。特に市場環境が悪化した場合などに、資産価格の相関が高まると見られている現象を分析するとともに、資産価格の変化がどの程度心理的要因によって説明できるかを分析する。 (1)今年度は心理的要因に関する基本モデルの設計という根幹目的に着手し、まず分析の対象となる金融データベースを選択した。今後の研究にとって適切なデータベースを購入・契約することは大変重要であるため、この選択は慎重を期した。市場のダイナミックス、投資家の投資実行パターンに関し、さまざまなアイデア・仮説を計量経済学的な分析方法を用いてテストした。現在は株式リターンの時系列データを分析対象としているが、モデル自体は種々の金融商品を含む包括的なものを考えている。 (2)「投資家は最適化原理にのみ基づいて行動する」と仮定する場合と、「投資家の心理的要因を加味して行動パターン分析」した場合で、市場へのインパクト(価格形成等),を比較することは重要であると考えられる。さらに近年、投資家に代わって投資資金を運用するヘッジファンド等のアセットマネージメントが市場に与える影響が急激に大きくなっている。そこで最大化原理(のみ)に基づくアセットマネージャによる資産運用の最適ルールを考察する論文「Optimal Stopping Problems for Asset Management」を完成した。本論文はAdvances in Applied Probabilityにアクセプトされた。今後、心理的要因がある場合へ拡張することも視野に入れている。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
株式リターンの時系列データの分析は順調に推移しており、無論楽観は許されないが検証しているいくつかの仮説をバックアップできる結果が得られることを期待している。
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Strategy for Future Research Activity |
(1)引続き株式データの分析を進め、市場のダイナミックスを形成する要因を数理的モデルで理論化することを目指す。 (2)分析の対象をクレジットマーケットやREITマーケット等に広げて、さらなる知見が得られないかを考察する。 (3)さらに数理モデルによる理論化を行うためには、動学的モデル自体の数学的性質を把握する必要がある。具体的には、近年の不安定な市場動向を捕捉するためには経済変量が不連続(ジャンプ付)となる確率過程を考えるのが有効であると考えられ、その研究を行う。
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Research Products
(2 results)