2012 Fiscal Year Annual Research Report
資産価格相関の行動学的分析とファイナンス工学への応用
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23330104
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Research Institution | Kyoto University |
Principal Investigator |
江上 雅彦 京都大学, 経済学研究科(研究院), 教授 (40467395)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
若井 克俊 京都大学, 経済学研究科(研究院), 准教授 (80455708)
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Project Period (FY) |
2011-04-01 – 2014-03-31
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Keywords | 資産価格理論 / 相関係数 / レジームスイッチ / 行動学的要因 |
Research Abstract |
① 本研究は、近年報告されている資産価格における相関関係の変化を説明するために市場の構造変化(それをもたらす投資家の行動要因)を組み込んでモデル化し、そのモデルを用いて資産市場データを分析するとともに、派生証券の価格付けやヘッジ方法を考察することを目的としている。今年度は「研究実施計画」における最重要課題である「相関構造の変化」を分析するモデルを構築できたものと考えている。これにより(近年報告されている)株式リターンの業種間相関の高まりが発生した時期を特定できたと考えている。この成果は学会発表のうえ、専門的学術誌に投稿予定である。 ② 金融危機において見られたように、流動性の枯渇のため市場環境が悪化し、投資家の逃避行動が拍車をかけ、複数の市場で環境が急変した点も投資家行動の観点から分析をした。特にクレジット・デフォルト・スワップ(CDS市場)の流動性に関する動学的モデルを構築した。モデルに基づく予測は実際のデータをうまく説明することができており、この成果についても学会発表、学術誌投稿を予定している。 ③「投資家が最適化原理に基づいて意思決定する」と仮定する場合と「投資家行動に影響を与える要因を加えて分析する」場合で、市場へのインパクトの違いを比較することは重要である。近年、投資家に代わって投資資金を運用するファンドが市場に与える影響が急激に大きくなっている。この関係で、最適化原理に基づくファンドマネージャの資産運用の最適停止ルールを考察する論文「Optimal Stopping Problems for Asset Management」を発表した。またこの問題をより一般的な確率過程で分析するための研究論文を完成し学会報告した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
市場構造の変化を捉えるモデルを構築できたこと、CDS市場における流動性の変化を説明するモデルを構築できたこと、またこれらのモデルが時系列データをうまく説明できていることを考慮すれば、順調に進展していると考えられる。これに加えてファンドマネージャの最適化行動に基づく投資ルールに関する研究も並行して順調に進んでいる。むろん楽観は許されないが、今後とも成果を得るための土台は十分に整ったものと考えている。
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Strategy for Future Research Activity |
① 引続き株式データの分析を進め、構造変化が投資家の資産選択問題において、どのような影響をもたらすかを分析する。また相関構造の変化をもたらしたマクロ的要因は何であったかを探求する。さらに分析の対象を広げて、ほかの市場(CDS市場、REITなど)にも同様な構造変化を発見できないかを考える。 ② 株価のモーメンタムやリバーサルは投資家の心理的な要因に由来すると考えられる場合が多いが、業種間相関の変化がこのような現象にどのような影響を及ぼしているかを考察する。 ③ 近年の不安定な市場動向を捕捉するためには経済変量が不連続(ジャンプ付き)となる確率過程の研究は有効であるため、引き続きその基礎研究を行う。 研究体制は引き続き、データ解析作業に大学院生の協力を得ながら江上と若井が共同で担当する。特に確率過程に関する分析については江上が、経済理論・投資家行動理論に関する分析は若井が中心となって、それぞれの専門性を生かしながら理論構築を遂行する。
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Research Products
(3 results)