2012 Fiscal Year Annual Research Report
日本の労働市場における外国人労働者の参入と定着に関する社会学的研究
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23330158
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Research Institution | Hitotsubashi University |
Principal Investigator |
倉田 良樹 一橋大学, 大学院社会学研究科, 教授 (60161741)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
宣 元錫 大阪経済法科大学, アジア太平洋研究センター, 客員研究員 (10466906)
西野 史子 一橋大学, 大学院社会学研究科, 准教授 (40386652)
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Project Period (FY) |
2011-04-01 – 2014-03-31
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Keywords | 外国人IT技術者 / 外国人技能実習生 / ベトナム系定住者 |
Research Abstract |
第一に業種別の産業史的研究に関しては、情報サービス産業と縫製業における外国人労働者の受け入れに至る歴史的なプロセスの解明という点で貴重な成果を上げることができた。まず情報サービス産業については、かねて取り組んできた韓国人IT技術者の日本への移住過程に関する調査をほぼ完成させることができた。日本の移民政策による寄与がそれほど大きなものではなかったとの結論は、従来の通説を覆す貴重な意義を持っていると考えられる。この成果に関しては、2013年5月の移民政策学会において報告を行う予定である。縫製業の外国人技能実習生に関しては、1990年以前から存在していた先行事例との継続性、という従来あまり注目されてこなかった事実をきちんと跡づけることに成功した。 第二に日本における外国人労働者の参入・定着・退出の過程に対して送り出し国を含むアジア域内の人の移動の動向がどのような影響を及ぼしてきたのか、という点に関する俯瞰図を得ることを目的として、2012年度においては、韓国とフィリピンの労働市場における外国人の受け入れ・送り出しに関する実態調査を行った。韓国とフィリピンは日本サイドから見れば、外国人労働者送り出し国として、それぞれ第二位、第四位、に相当する重要な送り出し国の位置にある。送り出し側が移住先・就労先である日本の労働市場にどのように接近しようとしているのか、という点の解明は本研究にとって不可欠の解題である。二年間の調査を通じて様々な事実発見が蓄積されているので、2013年度はこの作業をさらに継続することとなる。 第三に定住外国人の生活状況に関しては、姫路市、神戸市、八尾市、川口市のベトナム系住民を対象に定性的な事例研究を積み重ね、後期高齢期に入った一世の介護問題、エスニックビジネスの二世への事業継承の問題など、今後さらに深めていくべき探求課題を発見することに成功した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
2012年度の研究を通じて、①理論研究、②業種ごとの産業史的研究、③アジア域内諸国との関係に関する研究、④定住者の生活に関する研究、という4つの柱の全てについて、最終的に答えを出すべき探求課題を確立させることができた。単なる事実発見の羅列に終わらせることなく、「外国人労働者の参入と定着(と退出)に関する社会学的研究」として、いくつかの重要命題をまとまった形で提出できる見込みである。学会報告、学術論文などのまとまった形で上梓した中間的な成果報告は、まだ必ずしも充分な量に達していないので、最終年度にあたる2013年度においては、より多くのアウトプットを出していきたい。
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Strategy for Future Research Activity |
特に大きな計画変更の予定はない。 理論研究、事態調査とも、2012年度までの調査研究を継続することになる。まだ達成できていない研究計画として、メッキ加工業の外国人技能実習生の就労状況に関する研究、送り出し国のインドネシアが実行している日本の労働市場へのアプローチ方法に関する研究、2008年の世界同時不況以後における外国人労働者の日本からの退出過程の研究、という3点については、特に重点的に力を入れたい。最終年度にあたるので、研究成果を論文や学会報告の形で公表することにも努める。
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