2012 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
23330178
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Research Institution | Tokyo Metropolitan University |
Principal Investigator |
岡部 卓 首都大学東京, 人文科学研究科(研究院), 教授 (40274998)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
西村 貴之 首都大学東京, 人文科学研究科(研究院), 助教 (60533263)
小林 理 東海大学, 健康科学部, 准教授 (80338764)
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Project Period (FY) |
2011-04-01 – 2014-03-31
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Keywords | 貧困 / 生活保護受給有子世帯 / 社会的排除 / 学習・進学支援 / 差別 / プログラム開発 |
Research Abstract |
わが国において、すべての子どもたちに教育の機会を保障する仕組みがつくられている。近年では、高校等へはほぼ全員が、大学・短大等ではほぼ半数が進学しており、教育の機会はより上級学校へと広がってきていると言えよう。しかし、もう一方では、教育の機会を保障する前提としての経済的基盤が社会的格差や貧困の拡がりの中で、出身世帯がどのような経済的状況にあるかにより教育機会・内容に隔たりが現れてきている。すなわち、子どもの教育にどれだけ費用をかけられるのかにより、子どもの学力・進学の経路が決定されると言われている。 そこで、本研究の目的は、生活保護受給有子世帯を対象とし貧困の再生産(世代間継承)解消の観点から学習・進学支援に関する研究を行うことにある。具体的には、生活保護受給有子世帯の学習・進学の実態把握と課題の析出、子ども支援プログラムの策定並びに評価指標の開発、その効果測定を行うことにある。 本年(24年度)は、大きくは以下3点の研究を行った。(1)貧困の再生産(世代間継承)解消に向けた国内の動向として、国の支援・政策動向の把握に努めるとともに、地方自治体における取り組みを行政機関へのインタビュー調査や資料収集を通じて研究している。加えて、国外での支援・政策の動向の研究として韓国における支援・政策動向の情報収集に努めている。 また、(2)前年度に行われた調査に関して、①当事者調査を分析し、論文や学会等で発表している。さらには、②関係機関へのインタビュー調査の結果を報告書にまとめている。 (3)プログラム開発・効果測定に関しては、①A県の協力のもと開発された子ども支援プログアムの効果測定指標の開発を行い、②その指標を用いて、プログラム施行前と施行後の間にどのような変化が見られたかを明らかにするため、子ども支援プログラム(高校進学支援プログラム、高校生支援プログラム)の効果測定を行っている。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
生活保護受給有子世帯における学習・進学支援に関する研究として、本年(24年度)は、大きくは以下に示す3点の研究を行っている。 (1)貧困の再生産(世代間継承)解消に向けた支援・政策の動向を調査している。本年度は、国・自治体の支援・政策の進捗状況とその政策の特徴など、その動向の把握に努めている。そのなかでも、とりわけ日本国内のいくつかの自治体における独自の支援・政策に焦点を当てその実態を調査している。具体的には、自治体における無料塾など教育と福祉の連携の支援・政策を取り上げている。また国外での支援・政策の動向の研究として韓国における支援・政策動向の情報収集に努めている。 また、(2)前年度に行われた調査に関して、①当事者調査や支援者であるケースワーカー調査の結果を分析し、論文や学会等で発表している。加えて、②前年度に行われた福祉、教育をはじめとする関係機関へのインタビュー調査の結果を報告書にまとめている。 さらには、(3)A県の子ども支援プログラムの効果を測定する指標の開発と、実際の効果測定(高校進学支援プログラム、高校生支援プログラム)を行っている。 以上に示した進捗状況と初年度の研究成果を踏まえると、(1)国内外での貧困の連鎖(世代間継承)解消に向けた支援・政策動向の調査研究(国・地方自治体、韓国)、(2)当事者と関係機関への調査、(3)プログラムの開発・効果測定の3点に関して、おおよそ当初の計画にそって調査研究が進展していることから「おおむね順調に進展している」と言えよう。
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Strategy for Future Research Activity |
初年度は、(1)国内外での支援・政策動向として、韓国での子どもの貧困に関する先行研究のレビュー、国内での先行研究のレビューを行っている。また、(2)A県の協力を得て当事者へのアンケート調査とインタビュー調査を行い、その学習・進学の実態把握、課題の析出を行っている。加えて、ケースワーカーに対するアンケート調査、関係機関へのアンケート調査とインタビュー調査を行い、支援実態の把握、課題の析出を行っている。(3)A県の協力のもと、生活保護受給有子世帯に対する支援プログラムの開発を行っている。 続く本年(24年度)は、(1)国内の自治体における貧困の連鎖(世代間継承)解消に向けた取り組みを調査研究している。(2)初年度の調査結果をもとに、分析を進め論文や学会で発表している。また、初年度に行われた関係機関に対するインタビュー調査の結果を報告書にまとめている。(3)プログラムの開発・効果測定に関しては、初年度に開発された子ども支援プログラムの効果を測定する指標の開発とその計測を行っている。 最終年度は、以上に示した研究成果をもとに全体考察と結論をまとめる。具体的には、これまでに研究してきた、(1)貧困の再生産(世代間継承)の解消に向けた国内外(国・地方自治体、韓国)での取り組み、(2)生活保護受給有子世帯における問題と支援に関する実態と課題の調査(当事者と関係機関に対するアンケート調査・インタビュー調査)、(3)子ども支援プログラムの開発・評価測定の結果を総括する。 以上の作業を通じて、生活保護受給有子世帯における貧困の再生産の実態・課題の究明と、支援・政策の方向性を提示する。
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