2014 Fiscal Year Annual Research Report
社会的場面における自己制御-目標葛藤、資源枯渇、そしてリバウンドを越えて
Project/Area Number |
23330193
|
Research Institution | Hitotsubashi University |
Principal Investigator |
村田 光二 一橋大学, 社会学研究科, 教授 (40190912)
|
Project Period (FY) |
2011-04-01 – 2016-03-31
|
Keywords | 自己制御 / 感情制御 / 嫉妬的ステレオタイプ / リバウンド効果 / 制御焦点 / 制御資源 / 自己肯定化 / 社会的支援マインドセット |
Outline of Annual Research Achievements |
平成26年度には、まず、ステレオタイプ化経験後のネガティブ感情の制御の問題を研究した。年度当初の計画を変更して、感情測定の時点を3段階に操作する形にして従来と同様な現場実験を実施した。その結果、ステレオタイプ化経験後に平静さや楽しさの指標が一旦低下するが、自己正当化できる質問に回答した後には回復することが示された。動揺や落胆といったネガティブ感情の指標でも低下が認められたが、時間的推移については明確な証拠は得られなかった。次に、ステレオタイプ抑制後のリバウンド効果の自己制御の問題を、「冷たいが有能である」といった嫉妬的ステレオタイプを題材に検討した。実験の結果、キャリア女性やエリート男性などの抑制対象に競争意識を感じる場合には、ステレオタイプに沿って他者を認知するというリバウンド効果が示された。他方で、競争意識を感じない場合にはその効果が起きない(制御可能である)ことが示された。第3に、大学生が学業達成場面で行う自己制御の問題について、制御焦点の個人差に焦点を当てて授業を用いて検討した。その結果、促進焦点の強い者は、達成意欲を高めることを通じて試験の成績を上げようとすることが示された、他方で、予防焦点の強い者は、授業にきちんと出席することを通じて成績を高めようとすることが示された。前者は熱望方略、後者は警戒方略を用いていると解釈できるだろう。第4に、制御資源の枯渇を回復させるために、自己価値の肯定化が有効かどうかを検討する実験を実施した。しかし、予測と異なり、自己肯定化が制御資源を回復させる効果は示されなかった。以上に加えて、社会的支援マインドセットが、本人の達成動機づけを高めることを検討する実験研究を開始した。実験の一部については平成26年の夏にある研究会で発表したが、そこで指摘された問題点などを改善して、引き続き実験を実施する予定である。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
平成26年度の交付申請書では、1「ステレオタイプ化経験後のネガティブ感情の制御」、2「ステレオタイプ抑制後のリバウンド効果の自己制御」、3「制御資源枯渇時や失敗経験時の自己肯定化操作の有効性の検討」の3つに関する実験研究の実施を計画として提示した。このうち、1番目については計画内容を変更して実施したが、1~3ともそれぞれ着実に実験を実施することができた。また、探索的に開始するつもりだった「制御資源枯渇時や失敗経験時の他者志向的動機づけ喚起の有効性の検討」に関する研究も、複数の実験を実施して、研究会で発表することができた。これらの点から、「おおむね順調である」と判断した。
|
Strategy for Future Research Activity |
平成27年度も、交付申請書で提示した実験研究を着実に実施する。特に、新たに提示した「他者志向性が自己制御に及ぼす影響の検討」については重点的に取り組んで、自己制御がそもそも社会性を伴ったものであることを明らかにしたい。また、平成26年度までに実施した実験研究のうち、結果をまだ公表していないものがあるので、学会発表等で報告するように努めたい。さらに、平成27年度はこの研究の最終年度にあたるので、これまでの研究成果をまとめて、社会的場面の自己制御についての新たな理論的モデルを論文にして提案することを試みたい。
|
Research Products
(3 results)