2012 Fiscal Year Annual Research Report
9年一貫型の地域連携で取り組む品格教育への理論とエビデンスに基づく提案型研究
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23330263
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Research Institution | Hiroshima University |
Principal Investigator |
青木 多寿子 広島大学, 教育学研究科(研究院), 教授 (10212367)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
山田 剛史 岡山大学, 教育学研究科(研究院), 准教授 (10334252)
川合 紀宗 広島大学, 教育学研究科(研究院), 准教授 (20467757)
宮崎 宏志 岡山大学, 教育学研究科(研究院), 准教授 (30294391)
橋ケ谷 佳正 岡山大学, 教育学研究科(研究院), 教授 (50252945)
新 茂之 同志社大学, 文学部, 教授 (80343648)
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Project Period (FY) |
2011-04-01 – 2015-03-31
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Keywords | 品格教育 / よい行為の習慣 / 米国視察 / ポジティブ心理学 / 品格の4側面 |
Research Abstract |
よい行為の習慣形成を目指す品格教育(character education)は,小中連携の9年一貫で,学校・家庭・地域の連携で児童生徒の規範意識を育む生徒指導体制を可能にする。本研究では,9年一貫のための小中の接続,教育課程への位置づけ,学校・家庭・地域の連携の具体的方策を,教育心理学,教育評価,道徳教育,倫理学,特別支援教育,視覚伝達デザインの側面から提案する研究を行うことを目的としている。 本年度は,全米で最も古くから品格教育に取り組んでいる米国セントルイスのミズーリー大学にある品格教育と市民教育センターを訪問して,センター主催の品格教育の教員研修会への参加,品格教育優秀校の視察等を行ない,各方面からの視察を行った。 また,エビデンスに基づいた評価を可能にするための研究も行った。そこでは,日本で品格教育を行っている学校について,取り組み2年目の学校と3年目の学校で,品格の徳目に関する記憶テストを行うことで,品格教育の客観的効果の測定を試みた。その結果,3年目の学校の方が記憶テストの成績がよいことが示唆され,繰り返すことで,確かに児童生徒の記憶に定着していることが窺えた。 加えて,品格教育が人格形成に及ぼすポジティブな影響を検討することを目的として,ポジティブ心理学の知見を応用して,よい行為の習慣で培われる人格のポジティブな側面について明確にする測定尺度の開発を行った。この結果,4つの側面がポジティブな要素として抽出された(「根気・誠実」「勇気・工夫」「寛大・感謝」「フェア・配慮」)。今後は,この4側面の教育的効果,年齢による教育効果の違いなどを検討することにした。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
米国の品格教育とはどのようなものかをしるため,セントルイスの品格と市民センターを訪問するとともに,このセンターを介して品格教育優秀校を紹介して頂き,視察を行った。同センター主催の教員研修会にも参加させてもらった。この米国の視察は充実したもので,多くの知見を得られた。この視察に関する報告論文は,教育心理学,教育評価,道徳教育,倫理学の視点からまとめ,もうすぐ印刷される完成する予定である。 品格教育を広めるためには,品格教育が有効性を示すエビデンスが必要がある。そこで品格のテーマに関する記憶テストを実施した。その結果,品格教育に長く取り組んでいる学校の方が,品格のテーマを再生しやすいことがわかった。品格教育に関わる直接的なエビデンスを残せたことは,今後の研究の展開によい影響を与えることが可能である。 今までは,品格教育によって,人のどのような側面を伸ばすことができるのかがよくわかっていなかった。そこでポジティブ心理学の成果を援用し,日本の児童生徒に適した品格を測定する尺度の開発に力を注いできた。今年度は,これに関して4つの側面を,ポジティブ心理学の知見を応用して抽出することができた。加えて,これらから,確かに,児童生徒自身の幸福感に繋がっていることを示した。この尺度を用いれば,品格教育の効果をより詳細に分析することができるので,次の研究への大きなステップになると感じている。来年度からは,この4側面の尺度を通して,今まで蓄積してきた6年分のデータを分析し,品格教育の教育効果がどのように現れるのか,年度ごとに分析することが可能になる。 最後に,米国から2人の専門家をお招きし,日本教育心理学会でのシンポジウムで,SELと品格教育の違い,品格教育を用いた情報教育について話題提供をして頂いた。これらの話題で品格教育の本質を一層よく知ることができた。
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Strategy for Future Research Activity |
本年度は,2年分の視察結果を基盤に,教育心理学,教育評価,視覚伝達デザイン,特別支援教育の観点から,日本の学校教育への提案をまとめる。 品格教育のエビデンスに関しては,本年度に抽出した4つの側面をベースに,本年度得たデータを加えた7年分の蓄積データを分析し,品格教育の成果が,小中連携の9年間施継続して行うことで,どのように成果が生まれるのかを詳細に検討する。 本年度始めて実施した追跡調査に関しては,2年目の追跡を行い,1年目と2年目の比較を行う。 これらの研究を通して,9年一貫で行う品格教育について,その成果についてエビデンスを示すとともに,倫理学,道徳教育,教育評価,特別支援教育,視覚伝達デザインの観点から,教育現場に提案できる考察を行うことを目指す。
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Research Products
(26 results)