2011 Fiscal Year Annual Research Report
無限自由度量子系の確率解析的手法による非摂動的スペクトル解析
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23340032
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Research Institution | Kyushu University |
Principal Investigator |
廣島 文生 九州大学, 数理学研究院, 准教授 (00330358)
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Keywords | 場の量子論 / 無限次元解析 / スペクトル散乱理論 / スペクトル解析 / 汎関数積分 / 基底状態 / レヴィー過程 / シュレディンガー作用素 |
Research Abstract |
研究計画調書に掲げた平成23年度の研究計画にそって研究実績の概要を述べる。番号は研究計画調書による. 1(a)時間によらないstaticなローレンツ多様体上の自己共役なハミルトニアンを汎関数積分表示を用いて解析した。特に基底状態の存在・非存在を変数質量の減衰オーダーで特徴づけた.(Gerard, Suzuki, Panatiと共同研究) 2(a)PF模型のenhanced bindingとno-bidingを示した。これによりF.Hiroshima and H.Spohn, AHP(2001)の結果と合わせると,結合定数の値による基底状態の存在・非存在のスイッチングを示すことができた.また臨界結合定数の値を評価した.(Spohn, Suzukiと共同研究) 2(b)多体でかつ相対論的な運動項をもったネルソン模型のenhanced bindingの存在を汎関数積分表示を利用して示した.(Sasakiと共同研究) 3(a)相対論的PF模型のスペクトルを汎関数積分を用いて非摂動的に解析した.特に本質的自己共役性,基底状態の一意性と減衰性を示した.また並行移動不変な場合にも同様な結果を得ることができた. 4(a)ネルソン模型の紫外切断を確率論的手法によって外すことに成功した.熱半群の真空期待値を経路積分表示することにより,従来から知られていた手法とは全く異なる仕方で紫外切断を外した.さらにくりこみ項の新しい解釈を与えることに成功した.また擬リーマン多様体上に定義されたネルソン模型に対しても紫外切断を外すことに成功した.(Gubinelli, Lorincziと共同研究)) 5(a)磁場やスピンを一般化したシュレディンガー作用素を定義し,そのファインマンーカッツ公式を与え,スペクトル解析を行った.特に,ある確率過程のマルチンゲール性を応用して固有関数の指数減衰性や,また一般的な熱核の評価を利用して負の固有値の個数の上からの評価であるLieb-Thirring boundの一般化に成功した.(Ichinose Lorincziと共同研究)
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
当初は暗中模索であったがnon-localな2階の微分作用素やdivergence formをもった一般的なシュレディンガー作用素(スピン,磁場を含む)の作る熱半群の経路積分表示がsubordinatorやポアッソン過程の導入で可能であることに気づいてから,研究に大きな発展があった。また場の量子論にもマルチンゲールなどの確率解析的な概念を導入すれば,汎関数積分表示の重要な応用が可能であることに気付いたため。
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Strategy for Future Research Activity |
基本的には上記11.で述べてように,研究に大きな発展があったので,このまま研究を続行する予定である.ただし24年度,25年度の研究計画に掲げてあるものの中で確率2重積分の解析に関わるもの,フェルミ統計に関わるものは容易には解決できないと考えている.現在その解析に向けてベレジン積分やrough path解析の導入を考えている.
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