2012 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
23340045
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Research Institution | Nagoya University |
Principal Investigator |
草野 完也 名古屋大学, 太陽地球環境研究所, 教授 (70183796)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
今田 晋亮 名古屋大学, 太陽地球環境研究所, 助教 (40547965)
浅井 歩 京都大学, 宇宙総合学研究ユニット, 特定助教 (50390620)
塩田 大幸 名古屋大学, 太陽地球環境研究所, 特任助教 (90462192)
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Project Period (FY) |
2011-04-01 – 2016-03-31
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Keywords | 太陽 / フレア / CME / トリガ / 磁気リコネクション / MHD / シミュレーション / コロナ |
Research Abstract |
1.太陽フレアやコロナ質量放出(CME)などの太陽面爆発が発生する条件を探るため、100通りを超す様々な太陽表面磁場構造について3次元電磁流体力学シミュレーションを行った。その結果、シア磁場中に現れる反極性(OP)型及び逆シア(RS)型と呼ばれる2つの特徴的な磁場構造が爆発の原因と成り得ることを見出した。一方、ひので衛星による観測データの解析から、実活動領域NOAA10930及びNOAA11158で発生した大規模太陽フレアがこれら2つの磁場構造が出現した後にその領域で発生したことを明らかにした。以上の結果をAstrophysical Journal誌に論文(Kusano et al. 2012)として報告した。 2.上記2つの活動領域で発生した4つの大型フレアについて、フレア領域の磁場構造と彩層発光の関係を調べたところ、いずれのフレア領域でもシミュレーションから予言された磁場構造が存在し、その領域でフレア前に彩層からの発光が見出されることを明らかにした。また、活動領域NOAA11158におけるフレア領域に見られるRS型の磁場構造の形成過程を詳細に解析した。その結果、その構造がさらに小さな磁場要素の集積によって数時間かけて成長することを見出した。これらの結果より太陽フレアが活動領域における大規模な磁気シアの成長と小規模な磁場構造の形成の相互作用の結果として発生するマルチスケール現象であることを提唱した。 3.フレアのトリガからプラズモイドの放出及びCMEの形成に至る一連のダイナミクスをシミュレーションで再現するため、京コンピュータを使った大規模シミュレーションの開発を進めた。また、観測データに基づくデータ駆動シミュレーションの準備のため、その初期条件を与える非線形フォースフリー磁場を複数のフレア発生領域ついても求めた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
3次元電磁流体シミュレーションによる爆発解の探査をほぼ計画通り完了し、2つの特徴的な爆発メカニズムが存在することを初めて明らかにした。また、フレア前兆現象に関する観測データの解析を進め、理論的に見出された爆発解の原因となる磁場構造が実際のフレア領域に存在することを明らかにした。さらに、その構造がフレア発生前数時間に渡って徐々に形成されることを見出した。これによって磁場観測に基づくフレア発生予測の可能性を示した。一方、非線形フォースフリー磁場データベースの開発、フレア・CME統合シミュレーションの開発など観測データに基づくデータ駆動型シミュレーションの実現へ向けた準備を計画通りに進めた。それゆえ、5つの研究計画項目(①3次元磁場モデル、②前兆現象の総合解析、③データ駆動シミュレーション、④フレア発生メカニズムの解明、⑤フレア予測可能性の検証)をそれぞれほぼ計画通りに遂行すると共に、2つの基本的なフレア発生メカニズムがあることを初めて見出すという重要な科学成果を得ることができた。
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Strategy for Future Research Activity |
下記の項目について研究を推進する。 ①これまで行った3次元MHDシミュレーションで見出されたフレアトリガ磁場の構造とフレア爆発の関係を理論的に説明し、フレアトリガ磁場の大きさについてその臨界値を理論的に与えるモデルを作る。 ②ひので衛星と共にSDO衛星のデータ解析を進め、コロナ磁場の3次元構造とフレア発生の関係を観測から明らかにする。 ③光球面磁場構造の自動解析プログラムを開発し、フレア発生領域に現れる磁場構造を統計的に解析する。これに基づいてフレア発生予測スキームを開発し、アーカイブデータによってその予測可能性を定量的に評価する。 ④非線形フォースフリー磁場に理論的に見出されたフレアトリガ磁場を入射することによってフレアの再現シミュレーションを試みる。また、太陽全球とコロナを含んだ大規模なシミュレーションを実施し、フレアのトリガ過程からCMEの形成までを包括的に再現する。
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