2012 Fiscal Year Annual Research Report
タンパク質内エネルギー散逸の時空間分解観測による機構解明
Project/Area Number |
23350007
|
Research Institution | Osaka University |
Principal Investigator |
水谷 泰久 大阪大学, 理学(系)研究科(研究院), 教授 (60270469)
|
Project Period (FY) |
2011-04-01 – 2014-03-31
|
Keywords | エネルギー移動 / 共鳴ラマン分光法 / 時間分解分光法 |
Research Abstract |
本研究では、トリプトファン残基のアンチストークススペクトルをピコ秒の時間分解で測定することによって、タンパク質内の余剰エネルギー移動を調べた。試料には、立体構造が詳細に調べられているマッコウクジラ由来のミオグロビンを用いた。このミオグロビンにはトリプトファンが2残基含まれているため、まずこれらをラマン散乱強度の弱いチロシン、フェニルアラニンに置換した。この変異体にトリプトファン残基を1残基導入することによって、望みの位置にトリプトファン残基をもつミオグロビン変異体を作製した。この変異体について、ヘムからトリプトファン残基への振動エネルギー移動を観測した。一方、ミオグロビンにもともと含まれる2つのトリプトファン残基はいずれもヘムから離れた位置にあるため、アンチストークススペクトルには寄与しないことも明らかになった。このため、タンパク質試料の安定化を図るために、これらの残基は置換せずにプローブ用のトリプトファン残基を導入するよう、試料設計の方針を修正した。この種の変異体について、変異体3種(F43W、V68W、L89W変異体)の試料を作製した。 余剰エネルギー移動の距離依存性を調べるために、4ヘリックスバンドル構造をもつチトクロムb562について予備的検討を行った。シンプルな4ヘリックスバンドル構造を利用することによって、距離依存性をより系統的に調べることができる。チトクロムb562について、4種類の変異体の発現量および安定性を調べた。その結果、4種類のうち3種類については発現量も十分であり、試料も安定であることがわかった。今後、これらの試料についても時間分解アンチストークススペクトル測定を行っていく。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
ミオグロビンのいくつかの変異体に関する成果については、現在連続媒体モデルに基づいたシミュレーションを行い、論文としてまとめているところである。また、ミオグロビン変異体およびミオグロビン以外のヘムタンパク質についても、タンパク質試料を安定して高収率で得られるようになった。したがって、今後はこれらについて系統的に時間分解共鳴ラマン分光測定を行っていけばよい状況まで進展している。
|
Strategy for Future Research Activity |
測定に使用できるタンパク質の種類および変異体の種類を増やすことができ、これによって試料のバリエーションを増すことが図られたので、今後はこれらを用いて、タンパク質内のエネルギー移動の距離依存性および異方性について詳細に調べていく。
|
Research Products
(3 results)