2012 Fiscal Year Annual Research Report
CT励起光不斉反応:波長選択による高立体選択性の実現と介在メカニズムの解明
Project/Area Number |
23350018
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Research Institution | Osaka University |
Principal Investigator |
森 直 大阪大学, 工学(系)研究科(研究院), 准教授 (70311769)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
福原 学 大阪大学, 工学(系)研究科(研究院), 助教 (30505996)
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Project Period (FY) |
2011-04-01 – 2016-03-31
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Keywords | 励起波長効果 / エキシプレックス / 励起CT錯体 / 分子内CT相互作用 / 温度効果 / エントロピー・エンタルピー / 蛍光スペクトル / 可視光利用 |
Research Abstract |
これまでの検討で、基底状態の電荷移動(CT)相互作用に着目し、分子間環化付加反応における励起波長効果とその温度効果を検討した。また、分子内反応系においても波長効果を検討し、CT錯体の励起において通常のエキシプレックスとは異なる励起種が生成するばかりでなく、おなじCT励起内でも波長効果が見られることを見出し、励起波長の選択が光反応においてきわめて重要な制御因子であるということを明確に示すことができた。しかしながら介在するメカニズムや、これら励起種がどのように異なるかなどの詳細は明らかとなっておらず、厳密な意味での反応制御や、ひいては合成反応への応用は困難であった。このような問題点を解決するために、当該年度においては分子内CT系を構築し、その初期的な検討結果をJ. Am. Chem. Soc.誌に報告した。また励起状態挙動を蛍光スペクトルによる検討とあわせて行うため、ドナー部位としてナフチル基を有する分子内CT反応系の光反応の検討を開始した。興味深いことに、中程度の極性を有する溶媒で環化生成物を優先的に与える結果となり、これまでのベンゼン誘導体とは異なる結果となり、非極性溶媒中では、環化生成物に加えて転位生成物も得られた。また予期せぬ結果として、アセトニトリル中ではその付加体が生成した。このようなアセトニトリルの付加はこれまでに報告例のないきわめて特異な反応であるため、その適応限界等についてより詳細に検討することで、さらに励起CT化学種の詳細が明らかとなるものと期待される。成果は光化学討論会、基礎有機化学討論会等の国内討論会、および国際会議において報告するとともにリストに示すとおりの専門誌(主にアメリカ化学会)において発表を行った。また、一般向けの広報活動の一環として化学誌に寄稿した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
研究の本年度の当初計画、およびその規模は妥当であり、順調に進んでいる。以下に概略するように予想以上の成果が上がっている。 (1)主に反応機構に関する基礎的研究が十分達成され、J. Am. Chem. Soc.誌へ2報の報告をはじめ、成果報告がリストのとおり際立っている。 (2)国際会議での招待講演で研究が認められた。 (3)一般雑誌化学への読み物の執筆。 (4)一連の研究は不斉光反応における波長効果のメカニズムに関するものから始まっているが、予期せぬ結果として、CT性ならではの反応が見出された。このことは可視光利用反応へと展開可能であり、エネルギー問題解決への糸口ともなると考えられる。 これらの結果は、当初計画を質、量ともに凌駕するものであるため、(1)の判定と判断した。
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Strategy for Future Research Activity |
研究はおおむね順調に進展しているため、来年度も当初研究計画通り研究を進める。これまで特に不斉反応において励起CT錯体の特異性に注目してきたが、さらに一般的な光反応系においても励起CTの特異性に着目しあわせて検討を進める予定である。これらは可視光利用光反応としてエネルギー問題にも寄与する可能性がある。新年度に際し、さらなる推進のため、新らたに配属される4年生を1名追加して研究の一部を分担、担当してもらうこととし、効率アップを図る予定である。
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[Journal Article] Cyclodextrin Nanosponge-sensitized Enantiodifferentiating Photoisomerization of Cyclooctene and 1,3-Cyclooctadiene2012
Author(s)
W. Liang, C. Yang, M. Nishijima, G. Fukuhara, T. Mori, A. Mele, F. Castiglione, F. Caldera, F. Trotta, Y. Inoue
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Journal Title
Beilstein Journal of Organic Chemistry
Volume: 8
Pages: 1305-1311
DOI
Peer Reviewed
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