2012 Fiscal Year Annual Research Report
動的秩序を基盤とする発光性クロミック金属錯体の創製
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23350025
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Research Institution | Hokkaido University |
Principal Investigator |
加藤 昌子 北海道大学, 理学(系)研究科(研究院), 教授 (80214401)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
小林 厚志 北海道大学, 理学(系)研究科(研究院), 助教 (50437753)
張 浩徹 北海道大学, 理学(系)研究科(研究院), 准教授 (60335198)
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Project Period (FY) |
2011-04-01 – 2014-03-31
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Keywords | 金属錯体 / クロミズム / 発光 / 結晶構造 / クラスター / 配位高分子 |
Research Abstract |
1) クラスタリングにより制御されたクロミック錯体の構築. PS型の架橋配位子、2-(diphenylphosphino)benzenethiolを用いて一連の新規銅(I)錯体の構築を行い、2核、4核、6核クラスターの単離、同定に成功した。クラスターは、いずれも強発光性(量子収率0.2-0.5)を示し、それぞれ、青、赤、黄色の異なる発光色を示すことが見いだされた。また、ハロゲン架橋銅(I)複核および4核の強発光性コアをベースに、これらを三方向に架橋しうるトリピリジミン型配位子を用いて配位高分子化に成功した。X線構造解析に結晶構造を明らかにするとともに発光特性を検討し、明瞭な発光の温度依存性(低温で長波長シフト)を示すことを見出した。 2) 配位高分子化による構造復元クロミック系の構築. 三次元ネットワーク空間の形成可能なジカルボキシビピリジン配位子(H2dcbpy)を含む銅(I)、コバルト(III)、及びルテニウム(II)錯体配位子を用いて、四面体ベース、八面体ベースの多孔性配位高分子の構築を行った。粉末X線回折により、{Sr2[Ru(dcbpy)3].nH2O}等において、可逆的な構造変換を伴う水蒸気応答性が見いだされた。 3) 金属間相互作用により特異なクロミック挙動を示す白金-M複核錯体の構築. ピリジンチオラト架橋ジイミン白金(II)複核錯体は、syn型構造の異性体において有機物蒸気に応答して発光のON-OFFを示すことを先に報告している。これは、特有の二量体構造形成することに基づくが、今年度、二つの白金イオンの一つを他のd8金属イオン(Pd2+, Au3+)で置き換えた複核錯体syn-[Pt-M]の選択的合成に成功し、ベイポクロミズムに加えてメカノクロミズムも示すことが見出された。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本研究では,集積・配列・クラスター化することにより特異な発光を示す白金(II)や銅(I)錯体等の“集積発光性金属錯体”に注目して、より高度な動的秩序系の構築を目指している。平成24年度には、計画通り、クラスタリングや配位高分子化によりクロミック特性を示すいくつかの新規錯体を得ることに成功した。また、高感度、高選択的なセンシング機能の開発を目指すため、混晶系の探索も始めており、一方で、集積発光性の研究の中から、新たな外部刺激として、光や電気で制御できる白金複核錯体系も見出し、いくつかの新しい展開の芽が出始めている。
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Strategy for Future Research Activity |
上記のような経緯を踏まえ、今後は本研究課題を以下の2点に注目して推進する。 1) 異種金属イオンを組み込んだ白金-M複核錯体のクロミック挙動. ピリジンチオラト架橋ジイミン白金(II)複核錯体の2量体間の白金間相互作用の制御を目指して、二つの白金イオンの一つを軸配位子の取り込みが可能な種々の3d金属イオン(M = Cu2+, Ni2+, Co2+等)を組み込んだ一連のピリジンチオラト架橋複核錯体、syn-[Pt-M]を合成する。集積構造に及ぼす軸配位子の効果を調べるとともに、種々の蒸気に対する選択的応答性を検討する。 2) シクロメタレート型白金複核錯体のフォト&エレクトロクロミック制御. アミダト架橋シクロメタレート型白金複核錯体がアセトン中で光に鋭敏に応答して色変化を示すことが見出された。これは集積構造の変化による新しいフォトクロミズムと魅すことができる。そこで、この挙動を詳細に検討する。具体的には、とりうる混合原子価状態と構造の関係を電解分光学測定や質量分析等で追跡するとともに、X線構造解析による構造情報と併せて議論する。さらに、架橋配位子の修飾等による集積状態制御を試み、発光性白金(II)状態と混合原子価状態のスイッチが可能な系に展開する。
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Research Products
(18 results)